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余熱利用や景観配慮で進化する地熱発電 発電量全国2位の秋田県で新設続く

産経ニュース / 2024年12月18日 12時0分

発電所とは別の源泉ながら秋田県湯沢市の皆瀬地熱利用農産加工所が温泉熱で乾燥させたリンゴチップ

火山大国日本で再生可能エネルギーとして大きな可能性を秘める地熱発電。24時間安定供給でき、余熱は温泉や暖房、農漁業、食品加工など地元活用される。発電所を自ら経営する地域もあり、自然景観に配慮した目立たない施設の設計・配置も普及している。発電量全国2位の秋田県ではさらなる新設が続く。また、原子力並みパワーがあるとされる超臨海地熱の研究・実用化にも期待がかかる。

安定出力が強み

風力や太陽光発電が風や日差しに大きく左右されるのに対し、地熱発電は24時間安定して発電・出力できることが最大の強みだ。

地熱発電は、マグマに熱せられ250~300度になった地熱貯留層から井戸で熱水・蒸気を直接取り出す「フラッシュ発電」と、高温の温泉(70~120度)から熱交換する「バイナリー発電」がある。

地熱帯分布から東北と九州に多く集中し、合計出力は9月時点で最多の大分県が約17万キロワット、次いで秋田県約13・5万キロワットと、3位の鹿児島県(約6万7千キロワット)を引き離している。

秋田県では澄川(鹿角市)、山葵沢(湯沢市)など5つの地熱発電所が稼働中で、かたつむり山(同)と木地山(同)の2発電所が建設中。さらに6カ所で開発や調査が進む。「開発調査段階のものが将来稼働すれば秋田県の地熱発電量は国内トップになる可能性が高い」と県クリーンエネルギー推進課は意気込む。

このうち大沼(鹿角市)では、発電後の蒸気に清水を混ぜて生成した温泉を地元八幡平地区の宿泊施設などに供給している。

地域で経営も

産業技術総合研究所再生可能エネルギー研究センターの浅沼宏・副センター長は「(地下水が浸透してマグマに熱せられた)天然熱水型地熱資源量は米国、インドネシアに次いで日本は世界3位にもかかわらず、実際の発電量は10位で国内電源構成の0・2%にすぎない」と指摘する。

圧倒的な資源がありながら活用がはかどらない背景には、地熱貯まりにつながる地層の割れ目を探知して井戸を正確に掘ることが難しいことや「既存温泉への影響を懸念する声などがある」(浅沼氏)という。

この懸念で一度は頓挫した発電計画を住民自らが実現させ経営に乗り出したのが、わいた温泉郷のある熊本県小国町のわいた地熱発電所だ。

大手事業者の計画に温泉旅館などが反対して賛否が2分。地域の分断や過疎化を心配する住民らが、源泉に影響しない規模で経営して地元に利益をもたらすことで建設が実現。平成27年に商用運転を始めた。

住民の合同会社が発電所の管理運営を委託しているふるさと熱電(同町)の赤石和幸社長は「何百年も温泉を守ってきた地域によそ者が入ると対立が起きやすい。地元の土地や温泉を残したまま事業を行い利益をもたらす地域共創の姿勢が基本」と強調する。

売電などの収入が年間6億円に上り、うち約1億円が住民側の利益に。余熱利用の温泉供給やスマート農業も展開し「令和8年春の商用運転を目指して第2発電所も建設している」という赤石氏は、この成功例を「わいたモデル」として全国に発信している。

樹林に溶け込む配色も

近年は発電施設も自然景観を保全して影響を最小限にする「エコロジカル・ランドスケープ」手法で設計される。令和8年度末の運転開始を目指し、かたつむり山発電所の建設を進める小安地熱(湯沢市)の三浦聡裕建設部長は「近隣道路から見えるため、発電建屋は高さを抑えたかまぼこ型開閉ドームで色も樹林に溶け込むダーク系にする。パイプラインなど他施設も樹木で隠れるレイアウトにしている」と話す。

さらに将来の地熱利用について浅沼氏は超臨界地熱発電を挙げる。火山帯の地下5千メートル付近には高圧によって500度にもなる超臨界水があり、これを用いると原子力並みの発電量が得られるといわれており、「2040~50年の実用化に向けて超臨界地熱発電の開発が始まっている」と説明する。(八並朋昌)

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