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「103万円の壁」見直しで税収減、多選批判に5期目は? 被爆80年の広島知事に聞く

産経ニュース / 2025年1月5日 11時0分

インタビューに答える広島県の湯崎英彦知事=広島市中区の広島県庁(矢田幸己撮影)

令和7年が幕を開けた。広島では、被爆80年の節目を迎える。広島県政のかじ取り役として、世界平和の実現へ果たすべき役割は。4期目最後の新年を迎えた湯崎英彦知事(59)に、今年の展望や多選の是非が焦点となる中での「5期目」に対する考えを聞いた。

核兵器廃絶の機運高めたい

--昨年、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞した。被爆80年への考えは

「被爆者が訴え続けた核兵器廃絶の願いが世界でも共感を得た。今年は核兵器のない世界を実現する決意を新たにする機会として非常に重要だ。受賞とともに、廃絶に向けた国際的な機運を高めていきたい」

--具体的には

「新年度当初は、国内外から各界のリーダーに参加してもらい、ビジネスと平和貢献のあり方を多面的に議論して世論にインパクトを与えるフォーラムを開催したい。8月など、広島にもっとも注目が集まる時期には、若者向けの平和イベントを充実させて実施する」

--被団協は今年開かれる核兵器禁止条約の締約国会議に日本がオブザーバーとして参加するよう求めている

「公明党の代表に、斉藤鉄夫氏(衆院広島3区選出)が就いた。斉藤氏とは以前から『オブザーバー参加が重要だ』という話をしている。いろいろなルートを通じて働きかけていきたい」

「103万円の壁」の議論は賛成

--年収103万円超で所得税が生じる「年収103万円の壁」の引き上げは地方の税収減につながる

「短時間労働者が年収の壁を意識せずに働ける環境整備は人手不足の解消につながり、積極的な議論については賛成だ」

--県政への影響は

「(非課税枠を178万円に引き上げた場合)県民税は年間約245億円の減収となる。これは従来の約3割減。一般財源ベースでは、私学振興補助金の倍ぐらいのすごい額だ。そういう意味で『あとは自治体が何とかしなさい』などのレベルでは済まない。議論の進展を注視していきたい」

--広島県人口の転出超過数は3年連続で全国最多となった

「10~30代の若年層は就職や転職、進学などの理由による転出超過が多い。転出要因に関する調査分析では、就職先を重視する場合、大企業のほか、成長を感じられる企業を求めて大都市圏に流出している。一部では、漠然と大都市に憧れる人たちもいて、ボリューム感は分かっているので対策を検討中だ」

--具体的な取り組みのイメージは

「若者が働きやすく、働きがいがあり、充実した生活が送れる環境づくりに取り組む。『若者のチャレンジを全力で応援する広島県』をつくっていく、と。広島県に多くの人々を引きつけ、人口の好循環をつくり出していきたい」

5期目については「今は白紙」

--4期目も残り約1年。何に注力し、成果を得たか

「令和3年以降は100社を超えるデジタル系企業を誘致した。米半導体大手、マイクロン・テクノロジーによる大きな投資も決定し、成長分野の誘致はうまくいっている」

「先進7カ国首脳会議(G7サミット)を機に広島の食や文化、自然を世界に発信できた。経済波及効果は725億円。大きな成果だ」

--課題は

「物価高で多くの企業や県民、市民が苦しんでおり、いろんな情勢の変化に対応していくことは大きな課題だと思っている」

--観光活性化をどう図るか。宿泊税の活用は

「旅行者の満足度や利便性向上が非常に大事。それが口コミとして広がり、リピーターにつながる。宿泊税の導入(令和8年4月予定)はそのためで、具体的な使途は県内首長や観光関係者との議論を踏まえて決めていく」

--5期目に対する考えは

「今は白紙。いつ決めるかも今は分からない。意思決定の一番大きな判断材料は県民がどう思うかだ」(聞き手 矢田幸己)

ゆざき・ひでひこ 東大卒、米スタンフォード大で経営学修士(MBA)を取得。平成2年に通商産業省(現経済産業省)に入省。12年に退官し、通信事業会社を設立。21年の知事選で初当選し、現在4期目。

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