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新境地開拓も「8強の壁」破れず なでしこ池田太監督、限界を露呈し退任

産経ニュース / 2024年9月5日 10時0分

サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」の女王返り咲きを目指した池田太監督(53)の挑戦が終わった。日本サッカー協会は8月21日、池田監督の任期満了に伴う退任を発表。任期中に開かれた2つの主要世界大会はともにベスト8だった。世界ランキング(7位)通りの結果といえるが、格上を相手に採用した堅守速攻のスタイルが限界を露呈したのも事実。池田監督が残した〝遺産〟も糧に、なでしこの世界一奪回に向けた模索は続く。

2021年東京五輪後に発足した池田体制。昨年のワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会と今年7~8月のパリ五輪はともに準々決勝で敗退した。退任発表時、池田監督が日本協会を通じて出したコメントでは「チームとしてできることを増やし成長してこられた」と成果を挙げた一方、「選手とともにここから先の景色を見たかった」と無念さもにじませた。

確かにチームとしてできることは増えた。5バックの前に中盤の4人を並べる、自陣を固めてからのカウンター戦術が代表例。ボール保持を軸に世界をリードした10年代序盤から中盤にかけてのなでしこでは考えられない戦い方だった。熊谷紗希や南萌華(ともにローマ)といった一定の高さと強さを持つDFをいかした新境地だった。

インパクトを残した試合もあった。W杯1次リーグで、最終的に優勝を飾るスペインを相手にカウンターで次々にゴールを奪い、4-0の完勝を収めた。ボール保持率はスペインの68%に対し、なでしこは21%(11%は中立)。意図的にスペインを自陣に引っ張り込んで、背後のスペースを効果的に突いた。

ただ、同じスペインに限界も感じさせられた。1年後、再び相まみえたパリ五輪1次リーグでは、ボール保持率で24%対67%(9%は中立)と再び圧倒され、1-2で敗れた。W杯との決定的な違いはシュート数で、W杯で8-10と拮抗していたのが4-15と水をあけられた。カウンターを警戒するスペインから、なでしこはなかなか逆襲へ転じられる形でボールを奪えなかった。

延長の末に0-1で敗れた準々決勝の米国戦も同様だ。ボール保持率は、米国が66%でなでしこが26%(8%は中立)。米国のスピード対策として人数をかけて徹底的に自陣のスペースを消し、池田監督や選手の多くは「狙い通りに戦えた」との見解で一致した。シュート数も12-15と大差をつけられたわけではなく、悪手ではなかったのだろう。

では、最善手だったか。納得して戦いつつも、五輪期間中の選手からは「もっとボールを持ちたい」「主導権を握りたい」といったコメントが相次いだ。結果を求められる指揮官として、彼我の戦力を見極めて現実的に戦う必要はある。しかし、集大成となるはずだったパリ五輪のチームは、就任時から繰り返してきた「ボールを奪い、ゴールを奪う」という理想とはかけ離れた受け身のスタイルだった。

遠藤純(エンゼルシティー)らキープレーヤーを故障で欠き、スペイン戦の負傷で絶対的レギュラーの清水梨紗(マンチェスター・シティー)を失ったのは不運だった。ロングボールに簡単に屈しなかったのは、過去のなでしこにない強みだった。ただ、相手をリスペクトし過ぎているような消極的な戦い方は、世界を制したなでしこにあったチャレンジ精神や勇敢さを消すことにつながってしまった。

日本協会は27年ブラジルW杯での世界一奪回を目指し、なでしこの特性をいかしたサッカーを志向する新指揮官を国内外を問わずに探す方針だ。なでしこが体格、スピード、パワーで劣勢にあるのは否めなくても、技術は依然としてトップクラスにある。パリ五輪で再び世界の壁にはね返されたなでしこの挑戦は続いていく。(運動部 奥山次郎)

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