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「ポゼッション」か、それとも「カウンター」か 年内就任濃厚のなでしこ新監督の選択は

産経ニュース / 2024年11月11日 8時0分

韓国戦でゴールを決めた谷川萌々子(左)を迎える佐々木則夫監督代行=国立競技場(蔵賢斗撮影)

サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」が、準々決勝で敗れたパリ五輪後で初の試合を快勝で飾った。10月26日の親善試合で韓国を4-0と圧倒。自陣からのロングカウンターを軸に戦ったパリ五輪までの戦術とは異なり、敵陣でボールを奪い、速くゴールに迫る形を随所で作った。積極的なボール奪取は、パリ五輪まで率いた池田太前監督も就任時に掲げたスタイル。ただ、リスクも伴うため、年内に就任が濃厚な新指揮官が志向する戦い方に注目が集まりそうだ。

素早く「攻」から「守」へ

韓国戦を巡っては、1-0の前半34分に決めた2点目が象徴的だった。

北川ひかる(ヘッケン)が左サイドの敵陣深くで相手DFに体を寄せてボールを奪い、田中美南(ロイヤルズ)を経由してこぼれてきたボールを藤野あおば(マンチェスター・シティー)が押し込んだ。3分後に田中が挙げたゴールも、敵陣深くで相手DFのコントロールミスを見逃さずにボールを奪った時点で勝負あり。素早く「攻」から「守」へ切り替える意識があったからこそ生まれた得点だった。

2点目の立役者となった北川は、「アグレッシブにアプローチすることを意識した」と納得の表情を浮かべ、キャプテンマークを巻いた山下杏也加(マンチェスター・シティー)は「前線からプレッシャーをかける戦い方で結果が出てよかった」とほほ笑んだ。ボールを長く保持して主導権を握り続ける戦い方に、一定の手応えはあったようだ。

真価問われる欧米勢との対戦

そもそも2021年の東京五輪後に就任した池田前監督のキーワードも「奪う」だった。

就任会見では「ボールを奪ってゴールを奪う」と話していた。しかし、前方に人数をかけてボールを奪いにいけば、後方に大きなスペースが生じる。プレスをかいくぐられた場合はピンチになるリスクを抱え、池田前監督は強豪と対戦する際は割り切って堅守速攻に徹するようになった。

代表例が23年ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会1次リーグのスペイン戦、24年パリ五輪1次リーグのスペイン戦と準々決勝の米国戦だ。5人で形成する最終ラインの前に中盤の4人を並べて粘り強く守り、スピードのある攻撃陣の逆襲に活路を求めた。

23年W杯では最終的に優勝するスペインに4-0の快勝を収めた一方、パリ五輪ではスペインに1-2、米国に0-1で敗戦。可能性を示すとともに、限界も感じさせた。

池田前監督の後任不在で臨んだ韓国戦で監督代行を務めた日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長は監督時代、韓国戦のような主導権を握るスタイルで11年ドイツW杯を制覇し、12年ロンドン五輪と15年カナダW杯準優勝と輝かしい成果を挙げた。佐々木委員長は次期監督の選考にも深く関わり、自身と似たサッカー観を持つ指導者を推すことが予想される。

池田前監督も主導権を握るスタイルを理想としながら、勝利に近いのは堅守速攻と考え、手堅い戦い方を選択した。より攻撃的に戦った韓国戦の評価は、実力差があっただけに難しい。女王返り咲きを目指す以上、真価は世界をリードする欧米勢との対戦時に問われる。

池田前監督も直面した厳しい現実と向き合うことになる新監督の「決断」が注目される。(奥山次郎)

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