手術痕、血行障害、爪割れ防止… 手から知るプロ野球選手の苦労とは
産経ニュース / 2024年10月8日 11時0分
プロ野球の取材中、メモを取りながら話を聞いていると、ふと目に入るのが選手の手元。投げる、打つ、捕る、と商売道具の一つでもある手について話を聞くと、プロ野球選手の苦労やすごみが垣間見えた。
爪が変色、捕球で血行障害に
話を聞くきっかけになったのは、正捕手としてヤクルトを3度のリーグ優勝に導いた中村悠平の手だった。投手の球を受ける左手の爪が、やや茶色く変色し、変形しているのが痛々しく見えたからだ。昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本の優勝にも貢献した球界屈指の扇の要に聞くと、「血行障害」の症状の一つと教えてくれた。
捕球時の衝撃を繰り返すことによって血管や神経が圧迫され、血流が滞ってしまうといい、「たぶん、神経が死んじゃってるんですよね。プロになってから、気づいたらこうなっていた」。7~8年前から今の状態だという。意外と痛みはないようで、「寒いときに手がかじかむような感覚ですね。感覚がないから、全然痛くない。職業病っていったらそうかも」と、こともなげに話す。
肉厚なキャッチャーミットを着けていても衝撃を防ぎきれない、プロの投手の球の威力たるや。「谷繁(元信)さんは試合終盤になったら、手がパンパンでバットを振れないとか、革手(袋)が入りにくくなるとか。(捕球する手と逆の)右に合わせると革手はパンパン。そういうのはありますね」と中村。捕手の過酷さの一端がみえた。
強打者の宿命、手首に残る手術痕
2度の首位打者経験を持つDeNAの宮崎敏郎の左手首付近には、うっすらと手術痕が残っている。2019年8月7日の広島戦で折れた、左有鈎骨(ゆうこうこつ)を摘出した際のものだ。
スイングスピードが速い長距離打者に多いとされるケガで、速球をファウルした際、「ん? って違和感があって。大丈夫かな、痛いなって感じでした」。その後も打席に立ち続けたが、再度ファウルした際に激痛が襲い、審判らに「やめといたほうがいい」と促される形で途中交代した。
「もう(左手に)心臓がついてるみたいな感じでしたね。ドクドクって脈打ってて」。2日後、手のひらの小指の付け根付近を逆L字型に切り開き、折れた骨を摘出した。
実戦復帰には通常約2カ月かかるとされるが、宮崎の場合は約1カ月でスピード復帰した。「それまで骨折したことがなかった」というだけに、骨が強かったのか…。「最初は硬くなっていた患部を、自分でマッサージしたりして。力が入れば行けるかなーって感じでしたね。幸い握力はすぐ戻った。いまは違和感はないですね」
ちなみに、左手にはざっと数えただけでも12カ所ほどマメがある。「打ち方が悪いんじゃないですかね。こんなマメできるの」。独自のフォームから安打を量産する35歳は天才と称されることも多いが、泥臭い努力と強靭な忍耐力が技術を支えているのだろう。
爪割れ防止、行きついた「アロンアルファ」
巨人の開幕投手を務め、4年ぶりのリーグ優勝を支えた戸郷翔征の右手中指の爪には、小さく切ったテーピングが張り付いている。爪割れ防止でジェルネイルを施している投手はよく見るが、これも「爪の補強」の一つなのだという。
リリースの際、ぐっと指の腹でボールを押し込むときに圧力がかかり、「僕の場合は爪が浮き上がって、真ん中から割れちゃう。それだと最後までボールに力が伝わらないから、これに爪の役割をしてもらってます」。
野球界では「あるある」の対策で、爪にテーピングを張り、その上から瞬間接着剤のアロンアルファを塗ってカチカチに固めている。ジェルネイルは「上からの圧力が強すぎて、爪がすごい痛くなっちゃう」と断念。高校時代は別の接着剤を使っていたが、「乾くまでの時間とか、固さとかが、もうアロンアルファじゃないとダメ」と試行錯誤の末に今の形に行きついたという。
戸郷の経験上、投手でも横長な男爪だと割れにくく、縦長な女爪だと割れやすい傾向があるという。なんともうらやましい細長い手だが、「よくキレイって言ってもらえますけど、ちょっと後悔はありますね。太いほうが割れないから」と、プロの投手ならではの複雑な悩みを打ち明けた。(運動部 川峯千尋)
※野球規則では「投手は手、指または手首に何かをつけて投球することを許してはならない」と定めているが、日本野球機構(NPB)の友寄正人野球規則委員によると、爪割れ防止を目的としたネイルやテーピング・接着剤の使用(いずれも透明か肌色)は認められているという。
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