DeNA残留は「あまり悩まなかった」 佐野恵太の忘れられない8年前の恩義
産経ニュース / 2024年12月31日 11時0分
「いやあ、びっくりするんじゃないですか」。DeNAの佐野恵太(30)は、グラウンドを見つめて穏やかに笑った。11月に開催された野球の国際大会「プレミア12」の決勝前。プロ8年目で初めて日の丸をつけてプレーする思いを尋ねると、こんな答えが返ってきた。「ドラフト9位でギリギリかかったあの頃の自分に、『プレミアに出場できてるよ』って言ったら、びっくりするんじゃないですか。3年でクビにならないように頑張んないと、と思って始まったプロ人生だったんで」。DeNAへの残留を決めた30歳には、8年前の忘れられない一日の存在があった。
「苦しい、悔しい」ドラフト
8年前の2016年10月20日。広島・広陵高を経て、明大4年時に迎えたドラフト会議で、佐野は人生の中でも「長く、苦しい、悔しい」時間を過ごすことになった。
明大の同期には柳裕也(中日)と星知弥(ヤクルト)がいた。ドラフト開始直後に柳の名が呼ばれ、星も2位ですぐに指名を受けた。集まった報道陣向けの会見が始まり、そして終わった。それでも、まだ「佐野恵太」の名前は呼ばれなかった。
育成契約での指名なら、社会人野球でプレーすることを決めていた。「もうこのタイミングではプロに行けないんだろうな…」。1球団、また1球団と選択終了のアナウンスが響くたび、次の道に向けて心を切り替えようとした。運命の瞬間は、そんなタイミングで訪れた。
セ・リーグでは最後となる、ドラフト9巡目でDeNAが指名。「今でも鮮明に覚えてます。待ってる間に、柳の『お母さんありがとう(ドラフト選手の特集番組)』も始まっちゃってましたからね(笑)。だから胴上げもしてもらえてないんですよ、僕」と少し寂しそうに振り返る。この年に支配下登録選手として指名された87人中、実に84番目の指名だった。
順位はどうであれ、プロへの道は開けた。チームメートから祝福を受け、安堵(あんど)の思いがこみ上げる。しかし、同時に心の中にはある感情が湧き出てきたという。
「嬉しさと、悔しさみたいなものが半々交じり合ってて。絶対にプロの世界でやってやるんだっていう思いは、その瞬間からありましたね」
芽生えた反骨心
この反骨心は、プロを生き抜くうえで大事な礎になった。
1年目で開幕1軍入りを果たすと、4年目の20年はオフに大リーグへ移籍した筒香嘉智に代わり、4番打者を任されるとともに主将に就任。この年は首位打者にも輝き、22年には最多安打のタイトルも獲得した。立ち位置を確立した今も、試合後には「自分の中でしっかりリセットしたいので」とバットを振り込んでから帰路に着くのがルーティンになっている。
今季は歴史的な大混戦となったリーグ戦を3位で終え、クライマックスシリーズ(CS)突破、さらにはソフトバンクを破っての日本シリーズ優勝…。怒涛の日々を終え、7月に取得した国内フリーエージェント(FA)権と向き合った。
球界での自身の立ち位置を図る意味で権利を行使する選手も多い。「もっと悩むのかな」という自身の予想に反し、気持ちはすぐに固まった。「あまり悩むこともなく、行使するという選択はなかったです」と残留を決めた。
脳裏に浮かんだのはもちろん、8年前のあの日のこと。「あの時にベイスターズに獲得してもらった。それで僕のプロ野球人生が始まった。ベイスターズのユニホームを着て活躍することで、チームに恩返しをしたいなと」。忘れはしない、チームへの恩義が決断を後押しした。
26年WBC出場にも意欲
来季から新たに総額6億円規模の3年契約を結んだ。一塁には首位打者のオースティン、外野は今季頭角を現した梶原昂希や度会隆輝、ベテランの桑原将志や筒香とライバルは多い。日本シリーズ第5、6戦で先発を外れた。27年ぶりのリーグ優勝を目指すチームにあって、まずは「レギュラーをつかまないと」と足元を見つめる。
もちろん見据える先は、もっともっと高いところにある。侍ジャパンでの経験も経て、「もっと、もっと自分もいい選手になりたいなという思いを掻き立てられた」。2026年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)も控える。
「選出してもらえるのであれば、何度でもという思いはあるし、そういう成績をシーズンで残していきたい」。30代で迎える来シーズン。背番号7の物語にはまだまだ続きがある。(川峯千尋)
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