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サッカー界の絶滅危惧種、元日本代表・柿谷曜一朗引退 孤高の天才が抱えた18年の苦悩

産経ニュース / 2025年2月3日 12時0分

天皇杯で優勝し、優勝杯を掲げるC大阪の柿谷(中央右)=2018年1月、埼玉スタジアム(甘利慈撮影)

サッカーの元日本代表FW柿谷曜一朗(35)が1月に現役を引退した。C大阪のアカデミーで育ち、クラブ史上最年少の16歳でプロ契約を結んでから、18年間の現役生活にピリオド。想像を超える華麗なプレーで多くのファンを魅了したが、近年はサッカー界の変化に戸惑いも覚えていたという。組織化されたサッカーが全盛ともいえる中、〝絶滅危惧種〟ともいえる天才は胸の内に苦悩も抱えていた。

古巣で異例の会見

1月23日、柿谷は古巣のホーム、ヨドコウ桜スタジアム(大阪市)で引退会見を開いた。最後に所属したチームはJ2徳島だったが、4歳から過ごし、愛着の強いセレッソで別れを告げることを強く希望し、異例ともいえる会見が実現。笑顔で報道陣の前に現れ、冗談も交えながらマイクを握っていたが、サポーターへの思いを語る際には涙も浮かべた。

Jリーグ通算473試合82得点、日本代表通算18試合5得点。高校2年でプロになった大器だけに、数字はやや物足りなかったかもしれない。「もっともっと努力して、長くこのチームに所属してできたことはたくさんあったと思う」と振り返ったが「後悔はまったくない」と強調した。

1学年上の元日本代表MW香川真司(C大阪)は同期入団。ともに高校生プロとなり、比較されることも多かった。練習への遅刻を繰り返すなど問題児でもあった柿谷に対し、香川は19歳で日本代表に選出されるなどスターへの階段を駆け上がった。香川は柿谷の引退に際し「ライバル、ありがとう」と言葉を送ったというが、柿谷は「何を言ってんねん、と(思った)。足元にも及ばなかった自分が、そういってもらえたのはうれしかった」と語りながら「一番比べられたのは真司君だったと思う」と複雑な胸中も明かした。

「人と同じことをするのが嫌」

柿谷はC大阪がJ2だった2016年3月の群馬戦で、ゴールを背にしながら決めたヒールシュートに代表されるように、創造性あふれるプレーで〝天才〟とも称された。「天才って言われるほど、普通のプレーをミスするとダメージがでかいし、正直すごく嫌でした」と表情を曇らせ、「何かを考えてプレーしたことはなく、気がつけばそういうプレーになっていた」と振り返る。周囲から称賛されるようなプレーぶりの土台となったのは「人と同じことをするのが嫌やから。おもんないじゃないですか」。この一心でフィールドに立ってきた。

しかし、このポリシーは重荷になり、引退に通じることにもなった。近年のサッカーはチーム戦術の進化が著しく、柿谷のように天才的ながらリスクもはらむようなプレーをする選手は、絶滅危惧種ともいえるのが現状だ。「サッカーをしているというよりは、させられてる…っていう言い方はよくないかもしれんけど、今は90分でやることが決まっているようなサッカーになってるんじゃないかなと思う」と語った。

当然、戦術の重要性は分かっていたが「やっぱり僕は90分間ほっといてほしかった。もう今、ミーティングでもよくわからん言葉が山盛り出てくる。そんなことよりもボールを止める、人を抜く。それができてからの話、って感覚で育ったから、サッカーがホンマに難しくなった」と抱えていた苦悩を明かした。

今後は「サッカー系文化人」

次なる道は「サッカー系の文化人」だという。引退発表後は一般人とフットサルをする姿を交流サイト(SNS)にアップするなど、子供のころのようにボールを蹴ることを楽しんでいるようだ。

「指導者は向いてない」と首を振っていたが、2月8日に試合を行うJリーグU18選抜のコーチに抜擢された。派手なプレーや言動も含めて、まれな存在ながら、サッカーの醍醐味を感じさせてくれる選手でもあった。これからは「文化人」として天才のサッカーを、存分に伝えていってほしい。(大石豊佳)

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