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「防御率0・00ありえない」 巨人ブルペン支える〝ナシさん〟の哲学

産経ニュース / 2024年6月16日 7時0分

貴重な左の変則リリーフとして巨人ブルペンを支える高梨=11日、楽天モバイルパーク(佐藤徳昭撮影)

変則左腕のリリーバーとして巨人に欠かせない存在となった高梨雄平は、後輩たちから「ナシさん」の愛称で親しまれる。過酷なリリーフの世界で、プロ入りから7年連続で40試合登板以上。2020年途中に楽天から加入した31歳は実績だけでなく、自身の経験に基づく〝仕事の哲学〟でブルペンに厚みを持たせている。(成績は14日現在)

チームを救う好リリーフの後も、手痛い一発を浴びた後も、登板後の高梨に感情の起伏はみられない。理由は明快だ。「1軍で投げ続けて防御率0・00で引退する人って、一人もいないじゃないですか。リリーフをやってたら死ぬほど打たれる。143試合、それが何年も続く中で、一つの成功や失敗にフォーカスし続けるって難しい。それが続けばクビになるけど、どの世界でもいい仕事をする人って物事を長期的に見ていると思う。トータルでどうなのか、と」。

打たれてもすぐ出番がくるのがリリーフの宿命。コンディション調整と同時に、短時間で気持ちを切り替える精神的なタフさも求められる。「不安が全くない状態で臨める仕事なんてない。それも込みで仕事」と割り切る中継ぎエースは今季、20試合登板で防御率1・84と安定した成績を残している。

今でこそ飄々と仕事をこなせるようになったが、以前は「完璧主義」だったという。思考を変えざるを得なくなったのは早大時代。3年時の春季リーグ戦で史上3人目の完全試合を達成した後、思い通りの投球ができなくなる運動障害「イップス」を発症したことがきっかけだった。

明確な治療法は確立されていない。苦しい日々を過ごしながら、「自分の思うプロフェッショナル像に近づくにはどうしたらいいか」を自問自答。さまざまな業界の人と交流を持ったり、哲学書や小説を読んだりして見識を広げ、今の思考に行きついた。

投手陣では上から3番目の年長者ながら、いじられ役も買って出る。ムードメーカーでもある兄貴分の合理的思考は、後輩たちにも気づきを与える。

昨オフ、ソフトバンクから移籍してきた泉圭輔は、食事の度に高梨としばしば投球論を交わす。「シチュエーションによってここはこれを投げるとか、この球は危ないとか。プライベートでも結構話しますね。マウンドで何も考えられないこともよくあるけど、今年は割とそれがない。この間、ナシさんとそんな話をしたなって余裕があるのかも」。高梨効果? もあり、昨季3試合の登板に終わった27歳はここまで18試合登板で防御率0・55。新天地で持ち味を発揮している。

今季からブルペンを預かる内海哲也投手コーチも、学びを得た一人だ。延長十二回まで勝負がもつれた5月29日のソフトバンク戦。先発の堀田賢慎が六回に2死一、三塁とされ、打席に近藤健介を迎えた場面だった。救援に向かう大江竜聖に向けて言った、「(近藤の次打者の)栗原(陵矢)とニコイチで行けよ」という高梨の言葉にうならされたという。

かつての巨人の大エースも、救援経験は数えるほどしかない。「要は二人で1個アウト取れよ、と。近藤選手を絶対抑える、じゃなくて、カウントが悪くなったら次の栗原選手で勝負の気持ちでいい。これは先発しかやってない、僕みたいな人間からしたら分からない。そう考えるんだと勉強になりました。もう、『内海コーチ補佐』ですよ」と絶大な信頼を寄せている。

昨季リーグワーストの3・81だった救援防御率は、補強の成果も実り2点台半ばまで改善。その中心で腕を振る左腕は、口元に笑みを浮かべながら中継ぎの矜持(きょうじ)を口にする。

「流れの中でピンチを迎える先発の人は『ここでねじ伏せる』って感じになるけど、僕らってよーいドンでピンチから行くこともある。窮屈になるけど、その窮屈さの中でどうやって自由度を広げるかが大事。みんなで頑張っていきたいですね」(運動部 川峯千尋)

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