森保J、新たにテストの「攻撃的な3バック」に手応え 遠藤航「強豪相手でもできる」
産経ニュース / 2024年6月21日 10時0分
サッカーの日本代表が、6月の2026年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で新たな試みにチャレンジした。すでに最終予選進出を決めて臨んだミャンマー戦とシリア戦で、相手ゴール付近に多くの選手を配する攻撃的な3バックを採用。格下相手ということを差し引いても得点を量産する成果を挙げ、森保一監督は「1つのオプションとしてチームで共有できた」と、9月開幕の最終予選に向けた手応えを口にした。
6日のミャンマー戦(ヤンゴン)は狙い通りの完勝だった。多くの時間帯でフィールドプレーヤーが3-1-5-1(センターバック3人、守備的MF1人、攻撃的MF5人、1トップ)のような立ち位置を取り、左右のセンターバックも頻繁に中盤へ顔を出してビルドアップに参加。ボールを失っても相手ゴールに近い位置で次々と回収し、厚みのある連続攻撃で5-0と圧倒した。
11日のシリア戦(広島市)も前半を3バックで戦った。ウイングバックとして幅を取る左サイドの中村敬斗(スタッド・ランス)が先制点をアシストし、右サイドの堂安律(フライブルク)もカットインから2点目を奪取。前半22分までに3点を奪って勝利を決定付け、主将の遠藤航(リバプール)は「狙い通りにウイングバックが絡みながらゴールが生まれ、強豪国相手でもできる手応えを感じている」とうなずいた。
22年W杯カタール大会でも、3バックを採用してドイツとスペイン撃破につなげている。しかし、相手にボールを保持されて攻め込まれる時間帯が長く、実際は左右のウイングバックが最終ラインに吸収される5バック。カウンターからのゴールに活路を見いだすのが狙いで、全選手で自陣を固める形となっていた。
対照的に、6月の2試合はGK以外は敵陣に入る時間も長い攻撃的な3バックだった。地力に勝る日本に対し、アジアのライバルはゴール前を固めて失点回避を優先させるケースが多い。守るべき相手がいないのであれば、鎌田大地(ラツィオ)が「後ろに人がたくさんいても仕方がない」と言うように、前方に人数をかけて攻撃力を上げるのは合理的だ。
格段にレベルが上がる最終予選でも、日本に対しては引いて守るチームが多くなることが予想される。従来の4-2-3-1や4-3-3が基本となるにしても、前方に人数をかけて厚みを持たせる攻撃的3バックは、有効な打開策になり得る。
サッカーの本場・欧州でも守備時は4-4-2、攻撃時にはサイドバックの一角をボランチやサイドハーフ、ウイングのポジションへ上げて3-2-4-1や3-1-5-1気味に可変させる強豪クラブがある。選手には多くの役割をこなす能力が求められるが、鎌田は「日本には3バックに当てはまる(特長を持った)選手が多くいる」と指摘。今季のJリーグでも、川崎が守備時の4バックから攻撃時に3-2-4-1へ可変して戦ったこともある。
最終予選の相手とは実力が拮抗し、ミャンマー戦やシリア戦ほど圧倒的にボールは持てないだろう。あえて日本にボールを持たせて自陣に引っ張り込み、背後の広大なスペースを突いてくるしたたかさも持ち合わせている。攻守のバランスを気にかけながらゴールをこじ開ける臨機応変な駆け引きは不可欠となる。
ただ、勝利を約束してくれる布陣や戦術はないからこそ、相手の特徴や戦況に合わせて戦い方を変えられる柔軟さは武器となる。4バック、カウンター狙いの守備的3バックに加え、今回確かな手応えを得た攻撃的3バックは、厳しい戦いとなる最終予選で日本の力になってくれるかもしれない。(運動部 奥山次郎)
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