日本球界「10-10」さえいない寂しい現状 大谷が狙う「50―50」の異次元ワールド
産経ニュース / 2024年9月7日 9時0分
米大リーグ・ドジャースの大谷翔平が同一シーズンで40本塁打、40盗塁をマークする「40-40」を達成した。メジャー史上6人目の快挙の次は史上初となる「43-43」を達成し、前人未到の「50-50」へ向け、数字を積み重ねている。一方、日本のプロ野球で過去に「40-40」をクリアした選手は一人もいない。さらに今季は「投高打低」が影響し、6日現在、「10-10」さえもいない。大谷の異次元ぶりを浮き彫りにするが、日本は何とも寂しい状況といえる。
プロ野球で同一シーズンの「40-40」はいないが、別の年に40本塁打、40盗塁を記録したのも秋山幸二(西武)、別当薫(毎日=現ロッテ)の2人だけ。秋山は1987年に43本塁打、38盗塁、90年に35本塁打、51盗塁と「40-40」にあと一歩に迫り、「大リーグに最も近い選手」といわれた。
かつては秋山、別当のほか、中西太(西鉄=現西武)、蓑田浩二(阪急=現オリックス)、野村謙二郎(広島)、金本知憲(同)、松井稼頭央(西武)らスピードとパワーを兼ね備えたスターが「30-30」をクリアが、近年はそれも珍しくなっている。2019年に山田哲人(ヤクルト)が達成(2年連続4度目)して以来出ていない。さらに「25-25」は19年に鈴木誠也(広島、現カブス)、「20-20」も外崎修汰(西武)が達成したのが最後。20年以降は「15-15」もおらず、「10-10」が同年に4人、21年に6人、22年に8人、23年に2人いただけ。今季は6日現在、近藤健介(ソフトバンク)と牧秀悟(DeNA)がともに19本塁打、9盗塁で「10-10」に最も近い位置にいるが、まだゼロだ。
現在はチーム構成上、機動力を担う選手と長打を期待される選手を分けて起用するケースが多い上、大谷、鈴木、15年に「30-30」に打率3割も加えた「トリプルスリー」を達成した柳田悠岐(ソフトバンク)、3度達成した山田らスケールの大きいオールラウンダーが米球界に移籍したり、故障に見舞われたりする状況も重なっていることが、本塁打と盗塁で高いレベルの数字を残せる選手が少なくなっている要因だろう。
そもそも大谷が一人で達成した40本塁打、40盗塁は別々に見ても日本ではほとんどいない成績だ。過去10シーズン(14~23年)で40本塁打以上打ったのはセ・リーグでは村上宗隆(ヤクルト)、岡本和真(巨人)らのべ6人、パでは山川穂高(西武、現ソフトバンク)が一人で3度打っているだけ。球団別に見ると、ロッテは1986年に落合博満が50本を打ってから、誰も40本以上をマークしていない。
40盗塁はとくにセでハードルが高い。パは近年、周東佑京(ソフトバンク)、西川遥輝(日本ハム、現ヤクルト)、高部瑛斗(ロッテ)らが40盗塁以上でタイトルを獲得しているが、セは2010年に梵英心(広島)が43盗塁でタイトルをとって以来、盗塁王はすべて40個に届いていない。
40個以上は、阪神は赤星憲広が08年に41盗塁、中日は荒木雅博が05年に42盗塁したのが最後で、巨人に至っては1984年の松本匡史の45盗塁までさかのぼらなければならない。
「40-40」で思い出されるのが阪神の佐藤輝明のドラフト後の指名あいさつだ。2020年10月のドラフト会議の翌日、当時の矢野燿大監督が近大を訪れ、佐藤輝に伝えたのが「トリプルスリーのさらに上の『40-40』を狙ってほしい」という言葉だった。佐藤輝は「今のままでは無理」と応えていたが、スピードと長打力を考えれば、可能性はゼロではないと思わせた。
実際、佐藤輝は2年目の22年、20本塁打、11盗塁で「10-10」をクリア。さらなるステップアップが期待されたが、今季は本塁打は2桁に乗せたが、盗塁はいまだゼロ。スケールの大きさは誰もが認める選手だけに、今後の奮起が期待される。(プロ野球取材班)
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