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「もう一つのパレスチナ」ヨルダン川西岸 住民も近寄らない難民キャンプ 「獄中では拷問」の証言も

産経ニュース / 2024年12月30日 13時0分

9月、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ナブルスのバラタ難民キャンプにはイスラエル軍との戦闘で死亡した若者たちをたたえる張り紙があった(佐藤貴生撮影)

パレスチナ自治区ガザで昨年10月に始まったイスラエル軍とイスラム原理主義組織ハマスの戦闘は、レバノンやシリアに拡大した。国境を越えて広がる戦火の陰で、もう一つのパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸でもイスラエル軍の攻撃は日常化し、住民生活を圧迫している。難民キャンプでは民兵がスパイの潜入を警戒し、部外者を寄せ付けない緊張感が漂っていた。

イスラエル極右「来年は西岸を併合」

西岸の人口約330万人のうち約280万人はパレスチナ人だ。一方、熱心なユダヤ教徒は聖書に記述が登場する西岸を「神から与えられた土地」だと考え、146の入植地に約47万人のユダヤ人が住む。

12月1~3日にパレスチナ通信が報じた西岸のニュースの一部を紹介すると、イスラエル軍はパレスチナ人の村で住居や農作業小屋を破壊した。中心都市ラマラなど西岸全域で一晩に少なくとも15人を拘束した。さらに、パレスチナ人2人が獄中で死亡した。死因や状況は不明だという。

エルサレムを含む西岸では昨年10月以降、1万1千人以上のパレスチナ人が逮捕された。人権団体はイスラエルが管理する刑務所で「組織的虐待と医療の欠如」が起きているという。

米大統領選で親イスラエルのトランプ前大統領が復帰を決めた11月、イスラエル連立政権に加わる極右のスモトリッチ財務相は「2025年は(西岸に)主権を適用する年になる」とし、「西岸併合」に意欲を示した。

「言いがかりつけ長期投獄」

過去に何度も軍に逮捕されたという元高校教師、オマル・アサーフさん(75)に自治区ラマラで会い、獄中生活の実態を聞いた。今年9月のことだ。

アサーフさんは昨年10月、ラマラ中心街でイスラエルのガザ攻撃を批判するデモに参加して軍に逮捕され、約半年間、投獄された。獄中では6人のベッドしかない部屋に12人入れられ、乏しい食事で101キロあった体重は72キロまで落ちた。礼拝の際に祈りの言葉を口にすると、看守に警棒で殴られたりゴム弾で撃たれたり、連れてきた犬にかまれたりしたという。

投獄された当初、イスラエルの尋問官は「ハマスの有力指導者だな」と詰め寄ってきたが、1カ月もすると「若者の運動を組織しているな」と言い始めた。アサーフさんは「長期間、拘束する言い訳が必要なだけだ」と吐き捨てた。

実は友人は戦闘員 死ぬまで知らされず

筆者は9月下旬、西岸の自治区ナブルスのバラタ難民キャンプも訪れた。キャンプの目の前で住民のための文化施設を運営するタイシール・ナスララさん(63)は、「イスラエル軍は連日のように来て住民を連行していく。ガザでの戦闘開始後、数百人は連れ去られた」と話した。

キャンプの内部が見たいと告げると、ナスララさんはムハンマドさん(26)という若者を同行者として紹介してくれた。「イスラエル軍の関係者が女装したり、パレスチナ人に変装したりして浸透している恐れがある。内部は危険だ」と理由を話した。

ムハンマドさんが案内してくれたのもキャンプの外周の一部で、ごく短時間にとどまった。「これ以上内部に行くと民兵が警戒していて危険だ。私も近寄れない場所がある」。ムハンマドさんはこう話し、続けた。「大学生の時に友人がイスラエル軍との戦闘で死亡したのだが、それまで彼が民兵組織の戦闘員だとは知らなかった。知らない方が幸せなこともあるのだ」

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