揺れ動く兵庫百条委結論見通せず 副委員長〝漏洩疑惑〟も浮上…問われる中立性
産経ニュース / 2025年2月11日 7時0分
兵庫県の斎藤元彦知事によるパワハラ疑惑などを指摘した告発文書問題で、県議会の調査特別委員会(百条委員会)は10日、調査報告書の作成に向けた協議会の初会合を非公開で開いた。各会派の疑惑に対する見解は現時点で一致をみておらず、取りまとめは難航も予想される。関係者によると、報告書提出時期は3月中になる見通し。
一方、百条委の副委員長を務める日本維新の会所属の岸口実県議が、告発文書を作成した元県西播磨県民局長=昨年7月に死亡、当時(60)=の私的情報などを、政治団体「NHKから国民を守る党」党首、立花孝志氏に漏洩(ろうえい)した疑惑が一部で報道され、維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は10日の会見で、事実関係を調査すると明らかにした。
岸口氏はこの日、記者団の取材に漏洩を否定したが、百条委の調査の中立性・信頼性に疑義を生じかねず、早急な結果の公表が待たれる。
告発文書に記載された疑惑は全部で7項目。パワハラに関しては、斎藤氏が訪問先で公用車を降りてから玄関まで約20メートル歩かされたことで、職員を怒鳴った事例を挙げていた。斎藤氏は「業務上の指導」としている。
厚生労働省はパワハラの定義として①優越的な関係を背景とした言動で②業務上必要な範囲を超え③労働者の就業環境が害されている-3要件を挙げている。
パワハラ疑惑について、最大会派の自民党(38人)は内部でも評価が割れており、慎重な判断が必要とする。維新(21人)は、パワハラの認定は困難で「司法の判断によるべきだ」との意見だ。
公明党(13人)も「パワハラと認定できる事象は認められない」としつつ、斎藤氏の職員への言動は「業務上必要な範囲を超えた不適切な叱責」と指摘した。立憲民主党の議員らでつくる「ひょうご県民連合」(8人)は「パワハラと認定できる」と踏み込み、「理不尽な叱責があったことは明白」とした。
報告書のもう一つの焦点が、告発者に対する県の初動対応の是非だ。斎藤氏は文書を入手するや、側近幹部に「徹底的に調べてくれ」と告発者捜しを指示。公用メールの調査で元県民局長の関与が浮上し、当時の片山安孝副知事による事情聴取の上で元県民局長と特定、同5月に停職3カ月の懲戒処分とした。
公益通報者保護法の運用指針は通報者捜しを禁じ、百条委に参考人招致された専門家は「調査結果が出る前の不利益な取り扱いは許されない」と県の対応を問題視。一方、斎藤氏は告発文書について「事実でないことが書かれており誹謗(ひぼう)中傷性が高い」と繰り返し説明、懲戒処分の判断に問題はないとしている。
こうした県側の対応についても、各会派の意見は分かれている。
自民と県民連合は、告発者捜しなどを行った県の対応を「公益通報者保護法違反と考えられる」と指摘した。
一方、維新と公明は違法性の認定には慎重な構えだ。維新は、公益通報者保護法の専門家でも意見が分かれ「違法性までは断定できない」との意見。公明も同様の見解を示しつつ、県の調査方法などについて「(同法の)趣旨からすれば不適切」とした。
奥谷謙一委員長は、各会派で見解が食い違う部分は統合案を提示するとし、「最後まで議論を尽くして全員が納得のいく内容を目指したい」と述べた。
情勢に左右 結論ずれ込み
百条委員会の調査にはもとより中立性が求められるが、議会各会派の議員で構成される会議体の性質上、その時々の政治情勢に左右されてきた印象は否めない。
昨年8月30日の百条委に出頭した県職員は斎藤氏から強く叱責され、「頭が真っ白になった」と証言。続いて証人尋問に臨んだ斎藤氏は業務上の指導の範疇(はんちゅう)だとパワハラを否定したが、会合終了後の委員の会見では「パワハラに極めて近い」と評価されていた。
同9月19日には、斎藤氏の不信任決議案を県議会が全会一致で可決。百条委の調査がまだ終わっていない段階で、その結論を事実上、議会が先取りする形となった。
しかし昨年11月の知事選では、斎藤氏が逆風をはねのけて再選。これと前後して、交流サイト(SNS)上では委員への誹謗(ひぼう)中傷が激化するようになった。委員の一人だった竹内英明氏(50)はこうした状況に苦悩して議員辞職したが、先月18日に死亡しているのが見つかった。
知事選を挟んだことで百条委の証人尋問のスケジュールも変更となり、報告書の取りまとめ時期は当初想定されていた昨年中から、今年の3月中というところまでずれ込んだ。
この日の協議会の設置により、百条委の調査も最終局面に入ったが、各会派の意見にはまだ隔たりがある。
ある委員は「これだけいろんなことが起きるとプレッシャーはある」としつつ、「落としどころを探りたい」と力を込めた。
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