「今いくつ?」師走の街に集う少年少女たち…大阪・グリ下で一斉補導もトラブル後絶たず
産経ニュース / 2024年12月27日 11時55分
年末年始に合わせ、若者が大阪・道頓堀にあるグリコ看板下の遊歩道「グリ下」に集まり、犯罪に巻き込まれるのを防ごうと、大阪府警が一斉補導を実施した。グリ下周辺では、少年少女らによる飲酒や喫煙、薬物利用のほか、出入りする家出少女が買春被害に遭うケースが多発。防犯カメラの設置やNPOによる居場所提供といった対策は取られているが、道半ばの状況だ。若者が安全に過ごせる街へ、地域ぐるみでの模索が続く。
飲食店の明かりや広告看板の光で昼間のような明るさのグリ下界隈。厳しい寒さでも人通りは多く、インバウンド(訪日外国人客)でにぎわう。
今月20日午後10時から21日午前5時まで、府警少年課や南署の捜査員ら計約50人態勢で行われた一斉補導。大阪府青少年健全育成条例では、午後11時以降の未成年者の外出を制限しており、捜査員は5、6人のグループに分かれ、深夜徘徊(はいかい)している若者に声をかけて帰宅を促した。
「ちょっとごめんな。大阪府警少年課です」「君ら若く見えてさ。今いくつ?」
午後11時前、5人ほどの若者がグリ下に集い、談笑し始めた。未成年と思われる若者の姿もあるため、捜査員5人が近づき、話しかける。1対1で会話しながら、年齢や名前、住所などを聞き取っていく。
「18歳。高校3年生」。ある少女が答えたが、視線を合わせようとしない。捜査員が身分証の提示を求めても「持っていない」。だが、説得を続けると、しぶしぶ学生証を取り出した。16歳。カバンの中からはたばこの箱も見つかった。1日10本ぐらい吸うという少女を補導。保護者にも電話をかけ、駅まで送った。
グリ下に集う少年少女の中には、家族や学校で居場所がなく、つながりを求めて集まるという子も。同課によると、21日早朝までに中学生を含む計14人の未成年の男女を深夜徘徊や喫煙、飲酒で補導した。
府警はこうした一斉補導をコロナ禍で飲食店が軒並み時短営業や休業となった令和3年から、主に学校の冬休みや夏休み前に実施。3年の補導者数は15人だったが、4年は25人▽5年は96人▽今年は59人-となった。ここ数年の傾向について同課の市村竜一調査官は、最近はインバウンドの出入りも多く、若者が寄りつかないと分析。それでも「犯罪行為がなくなったわけではない。夜間の見回りは継続する」と話す。
ハード面での安全対策も進む。府警は地元の協力を得て昨年3月からグリ下の遊歩道に防犯カメラ2台を設置。「設置前と比べ、たばこや薬物利用など犯罪行為に走る若者が減っており、抑止にはつながっている」(市村調査官)という。
ただ、グリ下に出入りする家出少女らが犯罪やトラブルに巻き込まれるケースは後を絶たない。府警は1~2月、グリ下に出入りする少女らに睡眠導入剤を渡したり、みだらな行為をしたりしたとして、「グリ下の帝王」を自称する無職男=当時(31)=を逮捕。5月には、グリ下に出入りしていた女子中学生と交流サイト(SNS)で知り合い、わいせつな行為をしたとして、不同意わいせつ容疑などで20代の高校講師の男を逮捕した。
一斉補導にあたった同課の古江正和少年補導官は「若者らには、犯罪者にも被害者にもならないよう、冬休みを安全に過ごしてほしい」と話した。
少年少女に居場所提供
グリ下に集まる少年少女らを守ろうと、認定NPO法人「D×P(ディーピー)」(大阪市)は昨年6月、グリ下から徒歩5分の場所にあるビルに支援拠点「ユース(若者)センター」を設置した。週2日、主に午後4~10時、食料品や飲み物、生理用品などを無料で提供しているほか、スマートフォンの充電スペースや交流サイト(SNS)用の撮影スペースなどを用意している。
センターにはスタッフ数人が常駐して相談を受け付けており、希望者には生活保護の受給申請や必要な医療支援窓口を紹介するなどの支援も行う。
同法人によると、センター開設から今年12月20日時点で延べ約6200人が利用。1日平均約40人が訪れているという。法人担当者は「居場所のない若者が気軽に利用してもらえる安心安全な空間を提供できれば」と話している。
(土屋宏剛)
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