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能登豪雨1週間、復旧本格化前に襲った土砂災害と道路復旧先行のジレンマ

産経ニュース / 2024年9月28日 19時37分

石川県の能登半島を21日に襲った記録的豪雨では、9カ月前の地震で緩んだ地盤に大量の雨が降り注ぎ、土砂災害が相次いで発生した。これまでに判明した犠牲者13人の大半も土砂災害に巻き込まれた。豪雨から28日で1週間。地震後の被災地で土砂災害の対策工事が本格化する前に起きた水害に、復興が抱えるジレンマが垣間見える。

豪雨による土砂崩れで、赤茶色の山肌がくっきりと浮かぶ石川県輪島市町野(まちの)町。崩れ落ちた土砂は、ふもとの民家や道路を飲み込んだ。

「地震後、土砂災害の危険区域の変更などが周知されることはなかった。『ここは大丈夫なのか』と心配していた」。町野町に住む40代男性は肩を落とす。

豪雨で町野町では相次いで土砂崩れが発生。少なくとも3人が犠牲となり、一時孤立状態に陥った。元日の地震後、行政側は土砂災害を防ぐため山側に土嚢(どのう)を積むなど応急処置を施したが、本格的な修復工事に至る前に豪雨が町野町を襲った。男性は「地震後にさらなる周知があれば、事前に避難するなどして人的被害を抑えられたのではないか」と話す。

最大震度7を観測した元日の地震では道路の寸断が続いた。このため、政府が繰り返し支出した予備費の中心は道路復旧だった。

1月26日に支出を閣議決定した地震関連の予備費1553億円の中で、国土交通省関連は452億円。うち6割超の287億円は能越自動車道やのと里山海道などの主要道路の復旧に振り分けられた。土砂災害や被災河川の緊急対策は44億円に過ぎなかった。

9月10日閣議決定の予備費支出でも、国交省関係の713億円のうち461億円は道路インフラなどの復旧費。土砂災害関連も増えたとはいえ124億円にとどまる。

元日の地震により石川県内で発生した土砂災害は大小合わせて400件以上にのぼった。輪島市市ノ瀬町では約160万立方メートルもの大規模な土砂崩れが起きた。

国交省などは夏場の出水期に間に合うよう、応急的に現場に土嚢を置くなど対応。本格的な修復・補強工事は秋以降を見込んでいた。担当者は「すぐに全ての土砂を撤去することはできない。段階的な対策が必要で、堰堤(えんてい)の整備も含めれば年単位でかかる」と話す。

同省などは土砂災害の危険性がある地域に定点カメラを設置。震度5強以上を観測した地域では土砂災害警戒情報の発表基準を引き下げるなどしてきた。また、町野町を含め、地震で土砂災害が起きた地区の住民には対策の説明会も実施した。

ただ、説明会に出席したという町野町の50代男性は「ある程度被害が抑えられると聞かされていたが、応急処置で大丈夫なのか疑念もあった」と語り、想定を上回る豪雨被害に無念さをにじませた。

災害リスクの丁寧な説明不可欠

山村武彦・防災システム研究所所長の話

被災地の復興で砂防設備の再整備などハード面の対策はどうしても時間がかかる。応急処置をしたとしても被災地では完全復興まで災害が発生する危険度が高い状態が続く。そうした状況の中では、災害リスクなどを被災者に説明するソフト面の支援が重要になる。

今回の水害を前に、ハザードマップの早期見直しなど、ソフト面でもっとやれることがあったはずだ。被災者に現地のリスクを伝えるためにはハザードマップの緊急的な見直しが必要不可欠。概要だけでもいいので、できるだけ早く周知しなければいけない。

災害リスクに関する説明会を行った被災地域もあるようだが、どれだけ丁寧な説明がなされていたのか。同じ地区でも家ごとにリスクは違う。被災リスクを理解してもらうためにきめ細やかなコンセンサス(合意)が求められる。

平成28年の熊本地震でも2カ月後の豪雨で5人が犠牲になった。全国で同様の被害が起きる可能性もあり、地震後の急激なリスク上昇について住民にどれだけ伝えていたか今後、検証が必要だ。

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