都と東国を結ぶ重要湊か 幻の滋賀・米原「朝妻湊」、付近湖底から瓦
産経ニュース / 2024年7月19日 18時0分
滋賀県米原市の琵琶湖沖に広がる朝妻(あさづま)沖湖底遺跡で陶器や瓦などの遺物が大量に見つかり、その大部分が11~13世紀の尾張(愛知県)を中心とする東海地方産であることが、愛知県豊橋市美術博物館学芸員の中川永(ひさし)氏と米原市教委の水中考古学調査で明らかになった。このうち瓦は平安京などでの使用が知られているものと判明。文献だけで知られていた朝妻湊(みなと)の存在を裏付け、都と東国を結ぶ重要湊だったことを示唆する成果という。
朝妻沖湖底遺跡は、大地震で集落ごと湖中に没したとされる尚江千軒(なおえせんげん)遺跡として過去に調査。現在は潜水士の中川氏と米原市教委が滋賀県立大学考古学研究室と連携し、遺跡の範囲や性格の解明を目的に水中考古学調査を進めている。
調査成果は米原市役所で15日に開かれたシンポジウム「都と東国を結ぶ米原~東山道と琵琶湖の道~」で中川氏が発表した。それによると、令和3年度までの調査で見つかった遺物117点の8割を占める93点が11~13世紀の窯業製品で、80点が猿投(さなげ)や常滑(とこなめ)といった東海地方産だった。
皿や茶碗などの日用品のほか、輸送コンテナ用と想定される甕(かめ)や平安京・鳥羽離宮で使われた猿投産の瓦も多数見つかり、水運輸送中、何らかの原因で水没した可能性が考えられるという。
中川氏は「平安京への遷都を契機に、尾張産窯業製品が木曾三川を経由して東山道に合流し、天野川を下って朝妻湊にたどり着く物資流通ルートが展開したのではないか」との想定を明らかにした。
シンポジウムでは、淡海歴史文化研究所長の太田浩司氏が朝妻湊の歴史を解説した。古くは平安時代の950年、美濃(岐阜県)から奈良・東大寺に米などを献納した史料に朝妻湊が登場。豊臣秀吉は京都・方広寺大仏殿の用材を美濃から朝妻経由で搬送すべきだと命じたが、朝妻湊の南に1603年、米原湊が開設されると、要港としての機能は失われたという。
朝妻湊の位置は天野川の河口付近が通説で石碑もあるが、太田氏は「明確な根拠はなく、通説を白紙に戻して考え直す必要がある」と指摘。石碑から南に離れた朝妻沖湖底遺跡の内陸側に、かつて存在した内湖を利用した湊だった可能性を想定した。
文化庁主任文化財調査官の近江俊秀氏は「古代交通と海の道・陸の道~水中考古学の発展に寄せて~」と題して基調講演。文献から古代の琵琶湖水運をひもとく一方、「史料に出てこない港湾について明らかにするのが水中考古学」とし、「水中遺跡の宝庫である琵琶湖の調査は、日本の流通史を解く上で重要だ」と述べた。
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