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兵庫県知事疑惑調査の百条委、真相解明へカギ握る証言 県職員9700人アンケートへ

産経ニュース / 2024年7月19日 20時45分

兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを巡り、告発文書を作成した元県西播磨県民局長の男性(60)が残した陳述書などが19日、県議会の調査特別委員会(百条委員会)で資料として採用された。今後の大まかなスケジュールも示され、調査が本格化する。文書ではパワハラや贈答品の受領に加え、違法行為も指摘されているが斎藤氏はいずれも否定しており、関係者からの証言をどれだけ得られるかが真相解明の鍵を握る。

«Q 知事のパワハラはどのような種類のものでしたか»

«A 知事個人にとっての不都合、不満が原因となった叱責、罵倒である»

19日の第3回会合で公開された男性の陳述書は、主に想定問答で構成されていた。この日の証人出頭に向け、入念に準備していた様子がうかがえ、百条委の奥谷謙一委員長は閉会後、「思いをしっかり受け止めたい」と語った。

証人に心理的圧力

今後の審議で最大のポイントとなるのは証人尋問だ。

斎藤氏によるパワハラ行為▽県内企業からの贈答品受領▽信用金庫の補助金を増額しプロ野球の阪神・オリックス優勝パレードの募金としてキックバックさせた-など7項目にわたる今回の疑惑。項目別に審議日程を設け、斎藤氏をはじめとする関係者の証人尋問を行うが、その数は最大で50人規模に上る見通し。

百条委は関係者の出頭や証言、記録の提出を要求でき、正当な理由なく拒否したり虚偽の証言をしたりすると、禁錮や罰金刑が科される。議会の「伝家の宝刀」ともいわれる強力な権限を有するが「記憶にない」「覚えていない」といった証言が相次げば、疑惑追及が深まらない恐れがある。

客観的な資料での裏付けが困難な疑惑もあり、関係者からどれだけ有効な証言を引き出せるかが焦点となる。証人となる県職員らには心理的圧力がかかることも懸念され、議会側は「協力した県職員が不利益な扱いを受けることがないように」と斎藤氏に申し入れている。

新たな疑惑浮上?

この日の会合では、県職員約9700人を対象にアンケートを実施することでも合意。これまでに県議が独自に実施した職員へのアンケートでは、パワハラに関する回答も寄せられており、新たな疑惑が浮上する可能性もある。

調査結果は年内をめどにまとめられる予定で、これを受けて議会が斎藤氏への対応を検討することになる。

委員の一人は「知事の疑惑が事実と認められれば、責任を取ってもらわなければならない」と指摘。調査結果次第では、県議会で知事の辞職につながる不信任決議に向けた動きも想定される。(喜田あゆみ)

公益通報者 不利益扱いも

兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ疑惑などを告発した元県西播磨県民局長の男性(60)は、告発文書を県議や報道機関などに配布した後、県の公益通報窓口にも同じ内容を訴えていた。公益通報制度では通報者の保護が義務付けられているが、県は同制度での調査前に独自の内部調査を行い、男性の処分を断行。専門家は「処分は公益通報に基づく調査結果を待つべきだった」と対応を問題視する。

男性が告発文書を作成したのは3月中旬。斎藤氏は文書を「噓八百」などと批判し、男性を解任して懲戒処分に向けた内部調査を始めた。

男性は4月4日に県の公益通報窓口にも同じ内容を通報したが、県は5月、通報に関する調査を待たずに「文書は核心的な部分が事実ではなく、誹謗(ひぼう)中傷にあたる」とする内部調査結果を公表。男性が勤務時間中に、告発文書を含む私的な文書を作成したことなども合わせて処分した。

公益通報者保護法は、通報を理由に解雇や降格、減給など「不利益な取り扱いをしてはならない」と定めている。懲戒処分はこれに抵触しないのか。斎藤氏は告発文書の配布を「公益通報以前に行われた本人の非違行為」と位置付け、違法性はないとの見解を示す。

しかし、公益通報制度に詳しい淑徳大の日野勝吾教授は「不利益な取り扱いと判断される可能性はある」と指摘。公益通報があった以上、そのルートで真偽を確かめるのが先だとし、「人事課による独自調査は行ったとしても、処分の最終判断は公益通報に基づく調査結果を待つべきだった」と話している。(地主明世)

元鳥取県知事・大正大特任教授 片山善博氏 「地に落ちた信頼 再構築手遅れ」

兵庫県の元西播磨県民局長の男性が作成した告発文書が報道機関などに配布された後の斎藤元彦知事の対応は、不適切と言わざるを得ない。公益通報に関する調査結果が出る前に懲戒処分を下したことで、自身への批判に対する報復措置ではないかとの疑念を呼ぶ。

斎藤氏は「県職員との信頼関係を再構築する」と繰り返しているが、信頼は地に落ちたとみられ、再構築は手遅れといっていい。

県政への信頼を取り戻すには、斎藤氏が県議会の百条委員会に出頭し、誠実に対応することが求められる。一連の疑惑について真実を究明し、今回の問題を再発防止の教訓にすることこそ議会の役割だ。

もっとも斎藤氏が続投すれば、メディアを中心にこの問題が延々と取り上げられる。少なくとも百条委が結論を出すまで県側は対応に忙殺され、県政を前に進めるどころではないだろう。

トップが信頼を失った組織は円滑な運営が困難になる。斎藤氏が県政を前に進めたいと考えるのであれば、身を引くべきではないか。

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