1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

滋賀・石部高野球部いじめ 被害生徒の母親「傍観者多すぎる」「対応遅い」

産経ニュース / 2024年7月10日 15時0分

「傍観者があまりにも多すぎる。早い対応があれば、ここまで大きくならなかった」。令和5年9月、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に認定された滋賀県立石部高校(滋賀県湖南市)野球部のいじめで、被害に遭った男子生徒(3年)の母親が苦しい胸の内や学校の対応、同法の在り方などについて取材に答えた。滋賀県では平成23年10月に大津市で当時中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺する事件が発生。同法成立のきっかけになった。母親は、悲劇を繰り返さないためにも「同法をしっかりと守り、違反には罰則も科すべきだ」と強く訴えた。

いじめ助長の教員

いじめが発覚したのは、昨年9月5日だった。朝、普段通りに被害生徒が「行ってきます」と家を出た。ただ、父親は前夜から様子がおかしいと感じており、胸騒ぎがして昼休みに学校に電話で「息子の様子はどうですか」と尋ねた。登校していないことがわかり、同日夕には野球部顧問に「いなくなりたい」とラインで連絡があった。

父親らが電話やラインで何度も連絡し、同日午後5時半ごろ、自宅マンション最上階の6階で見つかった。被害生徒には自殺の意思があったという。

その後の調査で、被害生徒は1年時から、いじめを受けていたことがわかった。さらに、いじめは昨年9月12日、いじめ防止対策推進法の「重大事態」認定後も続いていた。

母親は、「学校の対応が間違っていたと思う。別室待機にすべき加害生徒を教室に入れ、息子を別室に隔離していた。『あいつと口聞いたらいじめって騒がれるから話すな』といっていじめを助長させた教員もいた」と怒りを隠さない。

「一番地獄やった」

3年になり、野球部員のいないクラスとなったため、いじめは影を潜めた。ただ、被害生徒は2年のころを「一番地獄やった」といい、今もつらい思いを引きずっているという。

「息子が『一番地獄だった』というのは、校長が『(今年の)1月31日までに部活に戻れるようにする』と約束したのに結局、3月に退部せざるを得なかったこと。本当に野球が好きだったから。別室に追いやられ、クラス全体から無視され始めたときもつらかったと話していた」と振り返る。

今年1月には、沖縄への修学旅行があった。しかし、被害生徒は参加できなかった。

「初めての沖縄で楽しみにしていた。ただ、無視されるクラスで何かあっても駆けつけてやれないのもあり、本人が『行かない』となった。校長、担任には『重大事態の生徒を放ってよく沖縄に行けましたね』と詰問したが、まともな返答はなかった」

今秋、母親は修学旅行の代わりに関東方面への家族旅行を計画しているという。

再調査を求める

今月初め、被害生徒が1年時から、加害生徒3人にベルトでたたかれる暴行を受けていたことが明らかになった。

野球部のいじめでは、弁護士や臨床心理士など外部委員を含めた調査委員の最終報告書がまとまっているが、母親は、「暴行が発覚したのできちんと調査し直してほしい」と訴える。

今回、最悪の事態は免れた。いじめの根絶について母親は、「傍観者があまりにも多すぎる。いじめを見つけたらすぐに教員に伝え、教員もすぐに対応してほしい。初期で芽を摘まないとひどくなる一方。今回も初期に対応していればここまで大きくならなかった」といい、「悲劇を繰り返さないようにと制定された『いじめ防止対策推進法』をしっかりと守り、今は罰則がないが、違反したら罰則を科すべきだ」と法改正にも言及した。

当たり前のこと、どうしてできない

第106回全国高校野球選手権滋賀大会が開幕し、連日、熱戦が繰り広げられている。そんなニュースを目にしながら、母親が語った。

「息子は夏の大会を楽しみにしていた。野球が本当に好きなのです。補欠でもいいので、野球を続けたかったというのは、痛いほどわかる」

好きな野球を続ける。そんな当たり前のことが、どうしてできないのか。

中学時代、被害生徒はテニスに打ち込んでいた。ただ、野球に対する思いは強く、高校に入り、初心者ながら硬式野球部に入った。しかし、卑劣ないじめに遭い、退部に追いやられた。今も野球部にいる加害生徒が怖いという。

朝日新聞がニュースで、今大会に出場した安曇川・湖南農・信楽・甲南・愛知・長浜農の6校連合チームを取り上げていた。「続けてよかった」という同チームの選手の言葉に母親は「連合チームのような純粋に野球を愛するチームに息子も入れればよかったのかな」とつぶやいた。

いじめ重大事態に関する最終報告書では、学校の問題点として、「被害生徒や保護者が深刻な状況であることの認識に欠け、迅速で組織的な対応ができなかった」と指摘した。学校は今一度この指摘をかみしめるべきだ。(野瀬吉信)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください