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圧倒的に強い日本の技術でアバターが変える働き方 会話ロボットの実装へ  月刊Biz

産経ニュース / 2024年12月15日 11時0分

アバター(分身)を使えば、多くの人が自由に社会参加できるようになる-。こんなコンセプトを掲げてアバター制作やアバター接客サービスなどを企業に提案するスタートアップ(新興企業)が存在感を高めている。大阪大学発のAVITA(アビータ、東京都目黒区)だ。アバターの活躍の場が、店頭での接客や保険の営業、社内の新人研修など、あらゆるシーンに広がりつつある。

兵庫県淡路市が今年8月に関西国際空港の到着ロビーに設置した「アバター観光案内所」が、ひときわ到着客の目をひいている。モニターの前に立つと、キャラクターが話しかけてくる。

「どこから来たの」「淡路島ってね…」

モニター前の人との軽妙なやりとりの中で淡路島のアピールをするアバターを操作しているのは、実は空港から車で1時間半ほどの距離にある淡路島のオフィスにいるスタッフだ。モニターに設置されたカメラやマイクを介してモニター前の人と実際に会話をしているという。

「社会にはさまざまな制約があって、働くのが困難なケースもある。車いすに乗っていて自由に動けないとか、シニアになって体力が衰えて若いころのようにできないとか。遠くにいて働けない場合もある。でも、アバターの操作であれば、通勤の負担を減らして場所を選ばず働ける」

観光案内所のアバターを手掛けたアビータの創業者の一人、西口昇吾・副社長最高執行責任者(COO)はこう話す。アバターを活用した新しい働き方が、少子高齢化や働き手不足といった社会課題の解決につながると考えている。

アビータは2021年の創業で、アンドロイド研究の第一人者として知られる阪大の石黒浩教授が社長を務めることでも注目を集めてきた。これまでパソナグループや三井住友銀行、塩野義製薬などの協業会社から資金を調達。累計調達額は18億9千万円に上る。特徴的なのは投資会社に頼らず、事業会社のみから調達していることだ。西口氏は「アバターはコミュニケーションのサービス。どんな業界にも貢献できる」といい、実際、導入の効果が得られやすいことが事業会社の投資を呼び込んでいる。

例えば、国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を手掛けるアドバンスクリエイトのオンライン保険相談。コンサルタントの指名予約をする際、リアルの相談員よりもアバターが支持され、成約率も高くなった。保険相談では詳細な個人情報を問われることも多いことから、人を目の前にすると臆してしまいそうな話でも、アバターだと話しやすいと分析している。

会社は「アバターで人類を進化させる」をビジョンに掲げる。石黒研究室で学んだ西口氏は、勤めていた日本テレビ放送網でバーチャルユーチューバー(VTuber)の事業を立ち上げたことで、人が生身の制約から解放され、分身を介して表現することの可能性に気付いたという。

「今、なんとなく、やり直しがきかない世界になっていると思う。何かに挑戦しようとしても、失敗してたたかれたり、笑われたりすることを恐れてしまう。だから生き方の選択肢の一つとして、自分と異なる存在のアバターが使えたらいいな、と思っている」

世界でも社会課題の解決にアバターの活躍する場面は増えているが、その多くが人工知能(AI)アバターだ。アビータでもAIアバターの開発を行うが、人が中心にいる「ヒューマンフレーバー」のアバターを大切にしてきた。

今後はロボットを活用したビジネスも見据える。今は配膳ロボットにアバター機能を搭載するなどして「会話ができるロボット」の実装に近づこうとしている。西口氏は「対話ロボットは世界でも日本が圧倒的に強い分野だ。日本には石黒先生もいる。先頭を走っているところをしっかり伸ばしていきたい」と力を込める。(安田奈緒美)

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