関西、実はスーパー戦国時代 安売り商法は変わる? 経済ヨコからナナメから
産経ニュース / 2025年1月9日 7時0分
いま最も勢いに乗っているスーパーマーケットの一つ、オーケー(横浜市)が昨年、東大阪市に関西1号店をオープンした。食品値上げが続く中での関東勢の本格参入。勢力図だけでなく関西勢の商法にも影響を与えそうだ。
筆者は以前住んでいた千葉県でよくオーケー店舗を利用した。流通業界を担当した経験もあり、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)戦略が軸の企業なんだよね、などと知ったかぶりで売り場を観察した。卵など日替わりの特売品やセールによる集客に頼らず常にすべて安くする、というスタイル。その細かな工夫には感心させられた。
今ではテレビの情報番組などを通じて広く知られていることだが、人手を取られるカートの整理を買い物客任せにしていた。カートを使うには百円玉が必要で所定の位置に戻すとお金は返ってくる、という仕組みだ。また、筆者の利用した店舗では、レジを出た脇に古い段ボール箱が積んであって持ち帰り用に使えた。
生鮮食品の店内広告(POP)には、旬のものかどうかを記載。旬ではないと明かした商品の売れ行きは鈍るだろうが、それも「お客さまのため」という。安いだけではない、とのアピール。人気の高さにも納得させられた。
しかし、この店のすぐそばにあった昔ながらの八百屋さんも負けてはいなかった。歩道にはみ出すほど商品を並べ、店員が威勢のよい声で、その日の売り物をアピール。いつも人だかりができていた。
「地場の小規模店が強いのは、仕入れが強いから」と業界大手の方に教えてもらったことがある。大型店の進出で小さな商店が苦境に陥る、と考えるのは早計だ。特に生鮮食品では地元の市場での人脈と目利き力がものをいう。「大手チェーンでも、強い店には地元の市場に顔が利くベテランがいる」という。
しかし、競争の激しい流通業界である。地域の枠を超えた組織戦も手は抜けない。多角化、特定のエリアに集中的に出店するドミナント戦略、自主企画(PB)商品展開、そしてM&A(企業の合併・買収)による規模のメリット追求…と、利益率を0コンマ何%か引き上げるために血道をあげる。
こうした取り組みは平成の中盤から後半あたりに、食品、衣料品、住関連商品と幅広く扱う総合スーパー(GMS)で加速した。背中を押したのはデフレとユニクロなど専門店の台頭だ。一方で食品を中心とするスーパーマーケット(SM)は、まだ安定しており域外への展開や再編策は抑え気味で、地元を深掘りする傾向が強かった。
しかし令和3年、流通グループのエイチ・ツー・オーリテイリングが、関西スーパーマーケット(現関西フードマーケット)の買収に乗り出すと、オーケーとの争奪戦に。オーケーは敗れはしたが、単独で関西進出を果たした。
人口減による市場縮小で、SM業界も新市場を開拓する必要性が高まってきたことや、物価高による実質所得の伸び悩みで消費が抑え込まれていることが背景にある。加えて年金制度改革で、パート従業員の厚生年金保険料の企業負担分が増え、利益が圧縮される可能性も出てきた。
オーケーを成長させたEDLPは米国発の戦略。一方、関西では特売による集客が主流とされる。ただ、米国発祥で会員制のコストコや、そのライバルに擬せられる関東勢ロピアなども関西に進出、人気と話題を集めている。関西勢は真っ向勝負の構えだが、思い切って戦略を見直す段階に入っているのかもしれない。
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