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大阪・キタでオフィス供給ラッシュ、企業の集積加速へ クボタ、塩野義…本社移転相次ぐ

産経ニュース / 2024年8月22日 18時15分

大阪・梅田でオフィス供給が加速している。今秋にはJR大阪駅北側の再開発地域「うめきた2期(グラングリーン大阪)」で新たなオフィスビルが完成。同駅周辺では他にも複数の新ビルが相次ぎ完成し、大阪市のオフィス供給量は平成12年以降で最大になる見通しだ。クボタや塩野義製薬などがグラングリーンに本社移転を決めるなど「キタ」と呼ばれる同地域への企業の集積が進む見通しで、難波周辺の「ミナミ」やその他の地域はキタとは異なる企業誘致戦略が求められる。

「私たちは今後、単に機械を作るのではなく、社会の課題解決につながるソリューションを提供しなくてはならない。新たな出会いを通じてビジネス、技術を生み出さないといけない。その意味で産官学の集積が始まる梅田はよい場所だろう」

クボタの北尾裕一社長は今月中旬、産経新聞のインタビューで、令和8年5月をめどにミナミの大阪市浪速区にある現在の本社から、グラングリーンに本社を移転する理由をそう説明した。

塩野義も、創業以来100年以上にわたって本社を置いてきた道修町(どしょうまち)(同市中央区)から、グラングリーンに7年夏ごろの移転を計画。手代木功会長兼社長は「世界へ羽ばたくわが社にとりふさわしい本社機能を探した。(グラングリーンは)JR大阪駅直結で海外の人も来やすい。新たなオフィスにふさわしいと思った」と語る。

グラングリーン大阪は旧国鉄の操車場跡地を開発して整備され、JR大阪駅直結のエリアに大型都市公園を整備し、その周辺にオフィスや商業施設、ホテルなどを設置するという開発計画だ。

抜群の立地が企業を引き込んでおり、クボタや塩野義、データセンター事業大手のさくらインターネットが本社移転を決め、ホンダもソフトウエアの開発拠点を設置する。スタートアップ(新興企業)や大学なども集まり、新たな交流拠点としても注目される。

大阪駅周辺では今年、オフィスビルの完成ラッシュが続く。駅西側の旧大阪中央郵便局跡地では3月、日本郵政などが開発する「JPタワー大阪」が完成。JR西日本などの新たな駅ビル「イノゲート大阪」も秋以降にオフィス部分が開業する。大阪駅周辺のビルの多くはデッキでつながり、線路や車道などを気にせず移動できる。

三幸エステートの斉藤典弘・大阪支店営業部長によると、キタでは2008(平成20)年のリーマン・ショック後の不況などでオフィスの新規供給量が伸びなかった。平成25年にグランフロント大阪が開業したが、オフィス需要は鈍く、入居率が低迷した。

その後のオフィス需要回復を受けてデベロッパーが開発を始めた結果、「今年開業が相次ぐ結果となった」。来年以降は新たな供給量が減少する見通しで、「決して現在の状況は供給過多ではない」という。

オフィスを借りる企業側も「社員に働きやすい環境を提供するため、自社ビルから賃貸に移る流れができている。老朽化した自社ビルより、最新の物件を借りた方が、設備なども優れている」と斉藤氏は指摘する。

大阪駅のうめきたエリアにある地下ホームはさらに、令和13年には関西国際空港方面につながる「なにわ筋線」の始点となる。関空、さらに新幹線停車駅である新大阪にも直結することとなり、交通アクセスの良さも企業の集積を後押ししている。

ミナミは商業地の強み生かせるか

梅田周辺のキタで、オフィスの開業ラッシュを迎えるなか、難波を中心とした「ミナミ」からはクボタの本社が移転するなど、オフィス供給ではキタに大きく差をつけられているのが実態だ。そのようななかミナミでは、関空との距離がキタよりも近く、インバウンド(訪日客)にも高い人気を持つ商業地としての強みを生かした、新たなオフィス開発が進められている。

昼夜を問わず訪日客があふれる南海難波駅前の「なんば広場」。その広場に続くなんさん通りを進むと、南海電気鉄道が開発を計画する新ビルの建設予定地がある。同ビルはANAファシリティーズ(東京)が借り受け、オフィスビル「ANAスカイコネクトなんば」として7年春に開業する計画だ。

南海電鉄によれば、ビルはスタートアップや中小企業の利用を想定した、コンパクトな作りに注力している。また運営を航空会社系の企業に委託することで、「関空に直結している難波の強みに関心を持つ企業」(宮井法幸まちづくりグループ開発部課長)の誘致を積極的に実現させたい考えだ。

難波エリアに本社を持つ南海電鉄は、同ビル以外にも、難波駅南側の「パークスタワー」など、ミナミのオフィス開発で主要的な役割を担っている。ただ、大規模開発が進む梅田とは「提供するオフィスの規模で、ミナミは勝負にならない」(宮井氏)と率直に認める。

一方でミナミは観光、商業という面で、キタと比べても高い競争力があるのも事実だ。そのため南海は「新規の顧客開拓を進めたい中小、スタートアップや、観光などサービス分野の企業のオフィス需要を特に開拓していく」(同)という。(黒川信雄、清水更沙)

ジョーンズラングラサール関西支社の山口武リサーチディレクター

JR大阪駅周辺で大量供給されるオフィスは、契約獲得でも好調のようだ。平成25年に(大規模複合施設の)グランフロント大阪が開業したとき、契約率は3割程度でスタートして、満床になるまで数年かかったが、今年供給が開始されるキタ周辺のオフィスは年末までに当時を大きく上回る契約率になるとみている。満床になるまでの期間も短いのではないか。

新型コロナウイルス禍以前、大阪ではオフィスの供給が極端に少なく、オフィススペース不足で企業側は業容を拡大できない問題を抱えていた。企業はそのような事態を教訓として、活発に契約を進めているようだ。好立地であれば、企業のイメージや社員の働く意欲の向上にもつながる。現在、オフィスは大量供給されているが、市場の状況は健全だ。

一方でミナミは商業の中心地であり、客が多く来館できるタイプのオフィス供給を促進すべきだろう。ミナミの中心である難波は、鉄道路線を通じ大阪府南部や、近畿圏と幅広くつながっている。それらの地域の拠点となるようなオフィス開発も求められる。(聞き手 黒川信雄)

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