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小林製薬なお創業家関与、信頼回復遠く 前社長「品質軽視の意識、一度も持ったことない」

産経ニュース / 2024年8月8日 22時32分

小林製薬が製造・販売した「紅麹(べにこうじ)」成分のサプリメントを巡る健康被害問題で、約4カ月ぶりの経営陣による説明の場となった8日の会見。これまでに、ずさんな情報管理体制が次々に明らかになり、危機管理に対する意識の甘さが露呈。会見ではコーポレートガバナンス(企業統治)が厳しく追及されたが、経営陣には責任を回避するかのような発言が目立ち、信頼回復への道は遠いことを印象づけた。

「品質を軽視する意識は一度も持ったことはない」。同日付で社長を退任した小林章浩氏は何度もこう強調した。後手後手の対応が繰り返され、〝隠蔽(いんぺい)〟体質と取られかねない状況が続いた同社。新社長に就任した山根聡氏は情報管理体制の不備について「隠そうというつもりはなかった」と釈明した。

また、紅麹を培養するタンクの蓋の内側に青カビが付着していたことなど不衛生な製造現場での状況を問われると、山根氏は「われわれが容認しているわけではなく、驚いた」と現場に責任を押し付けるような発言もあった。

同社は問題発覚から2カ月を要した公表や取締役会での未報告といった初動対応の遅れに引き続き、6月末には調査中の死亡例などを正確に厚生労働省へ報告していなかったことが発覚。その後も紅麹原料を卸していた供給先の情報についても正確な調査をしていなかったことが明らかになった。情報共有の不備が露呈するたびに、消費者からの信頼は失われ、山根氏は「(創業以来)最大の難局にある」と述べた。

一方で山根氏は問題点として会社の同族経営による「同質性」について言及。同社は創業以来100年以上にわたって創業家がトップを歴任してきたが、「一枚岩なのはいい点もあるが、今回は負の方へ向かい、現在の事態を招いた」と分析した。

ただ、章浩氏は社長を退いたものの、引き続き取締役として補償を担当。取締役会への影響を及ぼすことが考えられるほか、7月23日付で会長を辞任し、特別顧問に就いた小林一雅氏からも「アドバイスをもらう」(同社)とする。山根氏は「是々非々な判断をしていきたい」とするが、創業家の影響から自由な判断ができるかは疑問が残る。

また、企業統治の要となる取締役会では、同社が独自の判断で死亡例を行政への報告対象から絞り込んでいた点に関し、4月時点で社外取締役から報告方法を切り替える提案があったことも判明している。今後、社外取締役が機能するのかにも注目が集まる。

命に関わる事態なだけに、企業倫理の欠如が厳しく問われている同社。山根氏は「経営体制と危機管理の抜本的改革を進める」としているが、補償額は今後も膨れ上がり、業績への影響は避けられない見通しだ。(清水更沙)

関西大・亀井克之教授(リスクマネジメント論)

会見では経営陣の反省の色は見えたが、私たち消費者の知りたい情報が説明されたとはいえず、残念だ。人命が失われているような重大な事案だが、再発防止策も具体性がなく、これから検討を進めるという点もあった。

また、小林章浩前社長から「補償対応が進んだら、また製品開発に携わりたい」という趣旨の発言があった。これは私には、また社長に戻りたいというぐらいの発言に映った。これだけの事案が起きても詳細な説明をせず、時間がたったらまた経営に携わろうとする。創業家によるビジネスの限界を感じた。

コーポレートガバナンスの改善なども掲げているが、本当に重要なのは企業としての倫理観とリスク感度だ。健康被害の情報公開の遅れが意図的な隠蔽だったとは言わないが、リスク感度が鈍かったことは確かだ。

今回はあくまで決算説明会で、自ら経緯説明のための会見を開いたわけではない点も問題だ。被害者への補償の進め方や再発防止策について、改めて説明する場を設けるべきだ。(聞き手 桑島浩任)

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