「過剰な反応」株安に関西企業からは冷静な声、消費落ち込みには警戒感
産経ニュース / 2024年8月5日 17時55分
日経平均株価が史上最大の下げ幅を記録した5日、関西の企業からは「過剰な反応も含まれる」などの冷静な見方が示される一方、為替が約7カ月ぶりの円高ドル安水準となったことに対しては「外国人客の購買意欲がしぼむ」などと懸念の声も聞かれた。
日経平均株価は終日全面安の展開となり、今後の景気動向にも不安を投げかけた。
クボタは「(日銀による)利上げに対する過剰な反応も含まれるため、もう少し時間を置かないとコメントが難しい。ただ局面が変わったことは事実だ」と説明した。
関西の不動産関連企業の幹部は「企業としての業績が悪化して株価が下落したわけではない。とりあえず、状況を注視するしかない」と困惑の表情を浮かべた。
株安が消費の落ち込みに進展すれば、小売業界には打撃。大阪市内の百貨店の担当者は購買意欲の低下などにつながる可能性があるとして「インバウンド(訪日客)需要に不透明感が増す中、ダメージは避けられない」と警戒を強める。
円安で外国人が日本で割安に買い物をできる状況が続き、百貨店は免税売上高を伸ばしてきた。同担当者は円高についても「(外国人が)観光に来ても百貨店の購買にはつながらなくなるのでは」と危機感を示した。
海外に製品を輸出する企業にとっても、円高は懸念材料だ。農機や建機を主力とするクボタは海外で販売する製品の55%を国内で生産している。円安の恩恵が大きかっただけに、為替の動向によっては業績に影響を与える可能性もある。
一方、円安のため、輸入する原材料の価格高騰に苦しめられてきた国内メーカーにとって、円高は朗報でもある。大阪のある大手食品メーカーは「(原材料の輸入コストが下がり)わが社にとってはメリット」とし、「利益が増えれば株主還元も増やせる」と話す。
りそな銀行の担当者は、大幅な株安が始まった先週末から、顧客に対する丁寧なフォローを行っているという。「明日以降、さらに影響が出てくる可能性もあり、より丁寧な対応が必要。お客さまの不安を解消するため、きめ細かく寄り添った対応を心がける」
関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)はこの日の市場の動きについて「消費マインドへの影響などを懸念している。必ずしもわが国経済の実態を反映しているとはいえず、早期に市場が落ち着きを取り戻すことを望みたい」とのコメントを出した。
大阪商工会議所の鳥井信吾会頭(サントリーホールディングス副会長)は「米国の景気減速への懸念や円高の進行など、複数の要因が相まって全面安の展開となった」と指摘。その上で、「政府には実体経済に影響が生じないよう万全を期していただき、すみやかな株価回復を確信する」と期待を示した。
岩井コスモ証券の有沢正一・投資調査部長
企業には設備投資や賃上げの機運が盛り上がっていたが、株価の急落はそうした経営者の心理を冷やす恐れがある。
さらに、株式を持っている人の金融資産が目減りすることで、消費マインドにも悪影響が出る恐れがある。国内の富裕層やインバウンドの高額品の消費が後押しとなり、好調だった百貨店の売り上げへの影響が懸念される。また、大幅な株安がニュースで連日報じられることで、株式を持たない人の消費心理にも影響が出かねない。
東京市場の株価は年初からおおむね好調が続いていたが、株価が一直線で上がり続けることはなく、上下を繰り返すものだ。ここ数日の下げは極端だが、株式は安い時に買って高い時に売って利益を上げることが基本。一般の個人投資家は中長期的な視点を持ち、このような状況だからこそ、しっかりとした業績や事業環境のいい企業を選び、株式を購入して上昇を待つという考え方もできる。
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