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最古の染織「絞り」次世代に エンタメに活路 京都絞り工芸館館長・吉岡健治さん

産経ニュース / 2024年8月5日 14時26分

「『絞り』は世界で一番古い染織なんですよ」

布地を糸でくくるなどして染まらない部分を作ることで模様をつける「絞り染め」。日本では奈良時代には既に行われていたという伝統の染織技術だ。

京都市内にある絞り染め製造会社の長男として生まれ、子供のころから家業を手伝ってきた。業界を取り巻く環境が厳しさを増すなかで会社を継ぐと、展覧会の開催など、絞り染めの魅力の発信に力を入れた。

展覧会は人気を博し、常設化の話が持ち上がった。平成13年、絞り染めの魅力を発信し、かつ絞り染め職人たちの生活を守っていくための常設の場として「京都絞り工芸館」(京都市中京区)をオープンした。絵画や絵巻などを絞り染めで再現した作品が期間限定で展示されるほか、実際に絞り染めも体験できるのが売りだ。

館内のショップには日傘からショルダーバッグ、Tシャツまで、日常生活で使える絞り染め製品がずらりと並ぶ。着物だけでは立ち行かなくなりつつある中、新たな活路を開くためだ。

職人の意欲をかきたてようと、ショップでの直販にこだわる。昔は問屋を介してデパートなどに製品を卸す流通形態が普通だった。思い出すのは問屋からデパートでの実演販売を持ち掛けられた時のこと。「(実演販売中の職人の)後ろに作ったものが掛けてあって値札に150万円と書いてある。(それが売れても)本人が貰えるのは10万円。やる気なくなるやん」

ショップでの直販で職人は適正な対価を受け取り、消費者は安価でよいものが手に入る。「(職人も)売れたらうれしい。次はこんなものも作ってみよう、あんなものも作ってみようという気持ちになる」。そんな好循環を生み出すことがこれから先欠かせない。

展示やショップに加え、絞り染め体験も人気を博しているが、現在の来館者の大半が訪日客だという。「今は8割方が外国人。まさか職人に英語が必要とは思ってへんかった」と笑う。ネットを通じて絞り染めに興味を持ち、来館する外国人が多い。帰国した後に見事な絞り染めの着物を自作して写真を送ってくれたフランス人女性もいる。

職人の高齢化をはじめ業界の課題は山積している。いかに絞り染めの魅力を発信し、次世代へと繋げていくか。そのヒントの一つをいま来館する訪日客の姿の中に見出している。体験という「エンターテインメント」の形で伝統工芸を残していけるのではとの希望を抱く。「見て楽しんで、自分でやって楽しむ。こういうのも大事やなと。これが大切なことやなと」(荻野好古)

よしおか・けんじ 昭和16年、京都市生まれ。大学卒業後、父が創業した絞り染め製造会社「吉岡甚商店」に入社し、62年に社長に就任した。国内外での展覧会や講演など、絞り染めの魅力発信に精力的に取り組む。平成13年に会社に併設する「京都絞り工芸館」を開館し、館長を務めている。

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