「河内ブナ」の魅力を後世へ 東大阪・山口養魚場5代目社長の山口裕二郎さん まちかど人間録
産経ニュース / 2024年10月6日 11時0分
モノづくりのまち、大阪府東大阪市。実は農産物の生産も盛んだ。生駒山に近い同市下六万寺町の住宅街に広がるため池で、府の特産魚「河内ブナ」を養殖するのは山口養魚場の5代目社長、山口裕二郎さん(36)だ。
河内ブナは約100年前、淀川や京都の巨椋(おぐら)池にいたゲンゴロウブナを持ち帰り、河内地域のため池で食料用に養殖されてきたヘラブナの一種。ひし形に近い体形が特徴で「顔が小さく体高が高い(幅が広い)のを選んで育てている」と語る。
山口養魚場も約100年前に山口さんの曽祖父が創業した。山口さんも子供のころから「父やおじさんが仕事をしている姿が格好良いと思っていた。継いだのは大学生の頃に父が倒れたこともあり、先祖代々で残してもらったものを守る義務感ですね」
稚魚から約3~4年育てたものを出荷。年間出荷量は100トン前後ある。米や野菜なども育てる農家でもあり、河内ブナのエサとして精米時に割れた米などを与えている。「今ではSDGs(持続可能な開発目標)といわれるそうですが、もったいないですからね。昔からの循環型農業を続けている」
手塩にかけて育てた河内ブナの出荷先の大半は全国各地の釣り堀向け。「釣りをすると(魚の)引きが良く、元気が良いという声をいただく」と目を細める。
一方で、本来の目的である食料用としての需要は減っている。山口さんは「川魚は一般的に臭いイメージがあり、河内ブナも小骨が多い」という課題を認識。同市東部の旧枚岡市域では、昔から河内ブナをあらい(刺し身)にしたり、昆布巻きなどに料理したりした郷土料理として親しまれている。「うちのフナは泥を吐かせて臭みがないので、僕はあらいを酢みそで食べることが多いし、おいしい。河内ブナが食文化で再び見直されるようになれば」と食材としての魅力も語る。
悩みの種は、河内ブナをエサとして狙うカワウの存在。「1羽当たり1日2キロ食べるので、年間通せばかなりの被害が出る」とし、他の事業者が河内ブナの養殖をやめる一因になっているという。カワウ対策で「国や自治体には何らかの支援をしてほしい」と話す。
河内ブナの養殖事業者は府南部の泉州地域には存在するが、東大阪や八尾などの河内地域では唯一の事業者となった。「うちだけが育てているという誇りはある。河内ブナをなるべく次世代へ残していきたい」と意気込む。(西川博明)
◇
やまぐち・ゆうじろう 昭和63年東大阪市生まれ。大阪商大商学部卒。山口養魚場の5代目社長のかたわら農家も営み、育てる野菜は大阪エコ農産物に選ばれている。関西テレビの番組「よ~いドン!」で「となりの人間国宝さん」に認定されたこともある。
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