大阪・新世界で最後の将棋道場「三桂クラブ」が閉店 別れ惜しむ常連客らつめかける
産経ニュース / 2024年7月1日 7時0分
将棋のまちとして知られる大阪・新世界で唯一残る将棋クラブ「三桂(さんけい)クラブ」が6月30日で閉店し、約80年の歴史に幕を下ろした。別れを惜しむ常連客らが朝からつめかけたが、午後8時40分、最後の一人が店を後にすると看板が下ろされ、聖地から将棋文化を支えてきた灯が消えた。
新世界は、明治から昭和初期にかけて活躍した将棋棋士、阪田三吉(1870~1946年)ゆかりの地。その一角の商店街「ジャンジャン横丁」にある三桂クラブは、戦後まもない頃に創業した。NHK朝の連続テレビ小説「ふたりっ子」でヒロインに将棋を教えた「銀じい」のモデルで、賭け将棋の世界で「最後の真剣師」と呼ばれた故・大田学さんが指導していたこともある。
界隈にはかつて複数の将棋クラブがあったが、唯一残った三桂クラブも新型コロナウイルス禍で常連客が遠のくなどし、閉店を決めた。
最後の営業日となった30日は、常連客をはじめ、久しぶりに訪れた客や遠方から足を運んだ客らで店内はいっぱい。使い込まれた将棋盤や碁盤で対局を楽しむ光景が広がった。
午後7時半ごろ、3代目席主の伊達利雄さん(59)に常連客らから花束と感謝状が贈られた。その場に居合わせた客によると、伊達さんは「長い間、三桂クラブをかわいがっていただき、ありがとうございます。みなさんが将棋を指している姿、碁を打っている姿を胸にしまっておきたい」と目を赤くして感謝の言葉を述べたという。
午後8時の閉店時間が近づくと、客が一人また一人と店を出る。伊達さんは握手を交わしながら「長いこと来てくれてありがとう」「体に気をつけて」などと声をかけ、見送っていた。
20年以上通い続けた常連客の男性(81)は「今日は懐かしい人もたくさん来ていた。数えきれないくらい対局をして、気持ちがすっきりした。席主には感謝しかない」と話した。
閉店時間を過ぎても白熱した対局を続ける客もいたが、最後の一人が店を後にすると、伊達さんは看板を下ろし、カーテンを閉めた。
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