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<モーロクらんらん>(73)余生は禁句

産経ニュース / 2024年9月13日 7時0分

老いに関わって、使いたくない語がある。余生、残生、終活など。特に余生は嫌いだ。

子を育て、子孫を残す。それが人の本来的な生で、その時期が終わると、人の生涯は余生になる。以上のような考えが余生という語の背景にあると思うが、人の生涯は赤ちゃんから青年へ、青年から大人へ、そして老人へと変化するそのプロセス全体であろう。つまり、余生や残生というものはないのである。

ボクは去年の秋、エッセー集『老いの俳句』(ウエップ)を出したが、その本で次のように書いた。

「モーロクしないために、認知症を防ぐために、俳句を作りたい、という人がいる。かなり多い。でも、それは間違っている。中庸で平凡、魅力のない老人にしかなれないだろうから。そういう人たちが俳人として跋扈(ばっこ)して、俺たちの詠むものが伝統的な俳句だ、と主張したりするとちょっと困惑する。彼らは偽老人、あるいは二流以下の老人だから。くどいが、よぼよぼ、おたおた、よろよろがまっとうな一流の老人だ」

この発言の後でボクは、「俳人」は「廃人」に通じるが「廃人寸前の人こそ俳人である」とさらに過激な言い方をしている。要するに、よぼよぼ、おたおた、よろよろを自分の位置というか、存在の根拠にしたいのである。

以上の私見を朝の食卓でスモモを食べながらヒヤマさん(妻)に話した。ヒヤマさん曰く、言いたいことはなんとなく分かるけど、ほら、そんなに床へ汁をこぼさないでよ。ちゃんとお皿の上で食べてくれる?

ああ、無念! 口から勝手にもれてスモモの汁がぽたぽたと床にまで落ちていたのだ。(俳人、市立伊丹ミュージアム名誉館長)

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