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始まりはパンダのエサ 広がる「放置竹林」活用の輪 アート作品に変化、広がる芸術の輪

産経ニュース / 2024年6月27日 10時30分

各地で拡大する放置竹林。山の環境を荒らしたり、土砂災害の原因になったりと対策が急務になっている。伐採した竹の再利用も課題のなか、大阪府岸和田市で竹を使ったアート作品をつくろうというプロジェクトが本格化している。制作スタッフも募集し、地域ぐるみで放置竹林の削減を目指そうという試みだ。和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」のパンダに竹を提供していた縁から始まったプロジェクトで、思わぬ広がりをみせている。

世界に届くものに

「日本で一番のものを作っていきたい。世界にも届く美しさにしたい」

6月9日、岸和田市東部・ゆめみケ丘地区の竹林。雨が降りしきる中、集まった人たちを前に、「パンダバンブーアートプロジェクト」の実行委員会委員長の竹あかり演出家、池田親生さんが呼びかけた。

市や地元の住民、アドベンチャーワールドの運営会社などで4月に立ち上がった実行委はこれまで設計や計画を準備。この日は「竹取り初めセレモニー」として、実行委に加わる団体や企業、地元住民が作業に参加し、竹が生える斜面に分け入って伐採に取りかかった。

近くに住むミカン農家、西野尚子さん(56)は息子の陣さん(16)とともに作業し、「みんなと一体感を感じながら汗をかき、気持ちよかった」と笑顔をみせた。

8月には、竹を使った建築物を数多く手掛け、瀬戸内国際芸術祭とも縁が深い台湾出身のアーティスト、王文志(ワン・ウェンチー)さんが来日し、制作に取りかかる。予定している作品は、高さ10メートル、幅10メートル、長さ10メートルのスケールで5千本もの竹を組み上げた「ドーム」。中に入って楽しむこともできる。

作品はアドベンチャーワールド内に設置。10月にセレモニーを行い、その後1年間は作品を活用したイベントを企画している。

パンダのエサ確保

竹を伐採するそもそもの目的は、パンダのエサ採取と竹林で荒れる里山の環境保全だった。

パンダの飼育頭数の増加とともにエサの確保に苦労していたアドベンチャーワールドが、岸和田市内で新たな採取場所を見つけたことがきっかけ。市にとっては、ミカン農家の減少や再開発計画の頓挫などで里山が荒れ放置竹林の拡大に頭を悩ませていた。

両者は平成23年、協定を結びエサの提供を通じた連携を強化した。だが、パンダが食べるのは枝葉の部分で、エサにできない幹部分の有効活用が課題だった。これまでも竹灯籠を作ったり、竹を加工した集成材で食器を作ったりしてきた。

巨大アート制作はこうした活動の発展形だ。昨年、アドベンチャーワールドに招待された王さんが着想。今回制作する作品の「小型版」となるドームを300本の竹で試験的に制作した。

今回の作品のテーマは「挑戦」。5千本の竹を使用するという、本数だけでも昨年の十数倍もの規模となるため、ボランティアスタッフ「ぱんだず」を募集している。市民参加で、作品の盛り上げと放置竹林対策に関心をもってもらう狙いだ。

市の担当者は「ドローン操縦が得意な人に、作業している竹林の様子を撮影してもらった。こうした参加の仕方もある」と説明する。

「ぱんだず」の登録は16歳以上(18歳未満は保護者同意が必要)。保護者が登録して同伴する形ならば子供も参加可能。実行委委員長の池田さんは「自分たちの手で作ったという思いを持ってもらいたい」と呼びかけ、「良いものに仕上がると確信し、ワクワクしている」と意気込む。(藤谷茂樹)

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