陶芸による新たな表現世界の歩みをたどる 和歌山県立近代美術館「土が開いた現代」
産経ニュース / 2024年6月21日 13時0分
和歌山県立近代美術館(和歌山市吹上)は、戦後に現れた、陶芸によって新たな表現世界を切り開こうとする作家たちの作品を集めた「土が開いた現代 革新するやきもの」展を開催している。
茶碗や花瓶という実用品の枠から飛び出し、美術表現としての作陶を始めた彼ら前衛陶芸家たちの活動は、茶陶(京焼)の伝統を引き継いできた京都の地から始まった。林康夫らの四耕会、さらに八木一夫、鈴木治、山田光ら若手陶芸家たちによる走泥社である。
革新的な陶器は、どうして生まれてきたのだろうか。担当学芸員の奥村泰彦さんは「生け花の世界との関係が大きい」と語る。
前衛華道が興ってくると、華道家は花を生ける器にも前衛性を求めるようになった。「戦後最初に京都で四耕会がそうした仕事を受けたのです」と奥村さん。こうして実用性から芸術性へ傾斜を強めた林らは、オブジェの先駆けとなる表現を始めてゆく。
さらに、昭和29年に制作された八木の「ザムザ氏の散歩」(本展展示なし)をきっかけに独自の造形制作の評価が高まり、1960年代には大学教育を通じても広まっていった。
70年代には荒木高子、三島喜美代ら女性の前衛作家も登場、80年代には川上力三が土で金属の質感や座布団の柔らかさを表現した「座考シリーズ-空中楼閣-」を発表してその可能性を広げた。90年代初めにはバブル時代を象徴するかのような縦、横とも2メートルを超える井上雅之の「T-9216」が登場してくる。
今回展示された約100点は、制作された年代順に並べられており、時代ごとに変わってゆく作家の作風をたどれる。ほぼ収蔵品によって構成されていることから、美術館の個性を味わうこともできる。
クラフト(工芸)からアート(芸術)へ踏み出していった現代陶芸の歩みを概観するには格好の展示といえよう。(正木利和)
◇
6月30日まで(24日休館)。一般520円ほか。問い合わせ073-436-8690。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【横浜市民ギャラリー】「新・今日の作家展2024 あなたの中のわたし」開催60周年を迎えた歴史ある現代美術展
PR TIMES / 2024年7月3日 12時45分
-
美術家・三島喜美代さん死去 91歳 「ゴミ」モチーフの作品多数
毎日新聞 / 2024年6月27日 0時0分
-
世界的アーティスト ヨーゼフ・ボイスとのダイアローグ展が開催
NeoL / 2024年6月25日 12時0分
-
髙島屋大阪店にて「堀俊郎作陶展」開催。薬師寺・東塔の基壇の土を使用した茶碗に注目
IGNITE / 2024年6月12日 23時40分
-
松田権六の蒔絵や樂道入の黒平茶碗など古美術・近代陶芸の名品集う。6月15日(土)近代陶芸/古美術/近代陶芸PartIIオークションのお知らせ
PR TIMES / 2024年6月8日 12時15分
ランキング
-
1バイデン氏が大統領選を辞退したら何が起こるか トランプ氏に勝てる若い候補が出現する可能性も
東洋経済オンライン / 2024年7月3日 10時30分
-
2人骨、731部隊と関連か 新宿で発見、文書に示唆
共同通信 / 2024年7月3日 6時53分
-
3【続報】欄干に座らせている動画発見…謝罪させられている場面も 旭川女子高校生橋から転落殺人
STVニュース北海道 / 2024年7月3日 11時10分
-
4横浜患者連続死、無期確定へ=東京高検が上告断念
時事通信 / 2024年7月3日 16時28分
-
5【動画】死亡は3歳女児…母「体調不良で寝ていて」死因は脳挫傷 非常階段から転落?一部隙間も
STVニュース北海道 / 2024年7月3日 15時34分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)