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大阪・富田林でバナナ栽培 挑戦4年、1000本を実らせた愛情

産経ニュース / 2024年12月20日 12時38分

フィリピンや台湾など南国の果物というイメージが強いバナナ。大阪府富田林市で栽培に挑戦し、たわわに実らせている農園がある。同市龍泉の「龍泉ファーム」。令和2年に栽培を始め試行錯誤の末、今年は約千本を収穫するまでになった。まだ商業ベースには乗らないが「大阪でも育てることができる。バナナ作りをする人が増えれば」と話している。

バナナ栽培に取り組むのは伊藤秀二さん(45)。南国フルーツ好きが高じて、市内の自宅庭にバナナを植え研究を続けていた。子供が生まれ無農薬のバナナを食べさせたいという思いから、2年に近くの農地を借りてバナナ作りを始める。福祉関係の会社に勤めながらの趣味も兼ねた兼業農家だ。

もっちり甘く

栽培は姉のさおりさん、叔母の澤田寿美子さんも加わり、苗を沖縄から仕入れてスタート。しかし「最初の年と翌年は実がならず、土の配合から研究しました」。「マニュアル本」を探してみたものの見当たらない。植物園などに行き、バナナが育つ土を触って土を研究するなどして試行錯誤を繰り返した。

粘土質だった農地の土を大幅に入れ替え。木片や落ち葉が入った土を中心に、ワカメやサンゴ片など海の素材も加えるなど工夫した。どんな肥料をどのタイミングで与えるかも分からなかったが、ほかの果樹を参考に手作りの堆肥でテストを繰り返した。4年から収穫できるようになり、量も徐々に増加。6年は約500本のバナナの木から約千本を収穫できた。

収穫したバナナは自家消費のほか、近隣に配ったり、知り合いのカフェで販売したりとまだ商業ベースにのっておらず赤字だ。国産、無農薬。味も「もっちりしていて甘い」と自信をもっているが、スーパーなどで販売されている一般的なバナナより小ぶりの品種で、大量生産ではないため価格も高めで流通させにくいという。

インターネット販売も目指すが、人手不足で発送などに手が回らない。販売ルートの開発が課題だ。

寒くてもOK

寒冷地ではないが、大阪府でも冬は冷え込む。気象庁によると、平年値で府の12月の平均気温は8・7度、1月は6・2度。最低気温は平成30年1月に月平均1・8度まで下がったこともある。

なぜバナナは育つのか。伊藤さんは「バナナは100品種以上あって、うちではドワーフナムワ、アップルバナナなどがメイン。氷点下5度くらいの耐寒性があるんです」という。龍泉ファームの高さ約5メートルの温室では、12月でも天井は屋根で覆っていない。温室外にも植えており、大阪でも十分育つようだ。

高さ3メートル以上になるバナナは一見すると木のようだが、実は多年草。一度実がなると枯れるが、竹のように地下茎で子株を増やしていく。

龍泉ファームでは春に植えた数十センチの子株が夏に約3メートルまで成長。秋に幹の半ばで切り、翌春から再び成長させる。経験上、葉が45枚出ると実がなるそうで8~11月に収穫。収穫後に親木は伐採、子株を植えるというサイクルだ。子株は増え続けるため苗の販売も手掛けている。

伊藤さんは「苗を買ってもらってバナナ作りの仲間を増やしたい。富田林にはバナナがあると言ってもらえたらうれしい」と話す。苗などの購入希望は龍泉ファームのインスタグラムから受け付けている。(中野謙二)

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