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歩行リハビリに装着型ロボットの力 奈良のスタートアップが開発 衆知を結集

産経ニュース / 2024年7月30日 10時30分

歩行リハビリの支援にロボット技術を活用しようという動きが広がるなか、荷物の運搬作業などの負担を軽減するアシストスーツの技術を応用した機器が注目を集めている。関西のスタートアップ企業がそれぞれの独自の技術を組み合わせて開発。ワイヤを伸縮させて股関節の伸展を促すほか、シンプルな構造で着脱も容易という。次代の技術を追求する若き会社を訪ねた。

ワイヤ技術活用

「モーターでのワイヤ伸縮で、アシスト力を生み出します」。28日、大阪市内で開催された「大阪府理学療法学術大会」で、スタートアップ企業「INOMER(イノマー)」(奈良市)が開発中の歩行リハビリ用ウエアラブルロボット「プロトH」が公開された。

脳血管障害などによる後遺症で半身がまひした患者向けの機器。イノマーの特徴はワイヤ技術を活用したウエアラブルスーツの開発。シンプルな構造で高い効果を生み出すことを目標とする。〝力と技のアシスト〟をテーマに今年4月に設立された。

第1弾のプロジェクトが、半身にまひが残る患者に向けた歩行リハビリ用ウエアラブルロボットの製作だ。ウエアラブルスーツはアシストスーツやパワードスーツともいわれ、圧縮空気やモーターなどの力を利用して、重い荷物の移動などで腰や腕の負担を軽減する。この技術を応用したのがリハビリ用ロボットで、足や腕の機能回復訓練に、さまざまな機器が活用されている。

プロトHはベルトを使って腰と太ももに電装ユニットなどのパーツを装着。モーターでワイヤを伸縮させることで体の動きを補助する。イノマーで広報を担当する福井啓子さんは「体の片側にまひの残る患者さんは足を踏ん張る力が弱く、姿勢の維持が難しいので歩きにくくなる。プロトHは、ワイヤのアシストで太ももを引きながら、ヒップパッドで臀部を押し込み、姿勢がよくなる。ワイヤの補助で足を踏ん張ることができ、自然に反対側の足が前に出る。歩幅が広がり歩きやすくなり、スピードも上がる」と話す。

療法士の負担減

リハビリは通常、理学療法士が患者の体をサポートしながら行う。イノマーは、理学療法士のサポート技術をロボットに学習させることで、安定したリハビリと療法士の負担軽減をめざす。

医療現場での実証実験も行われており、京都大原記念病院(京都市左京区)理学療法士の葛形美紗智さんは「歩幅が広くなり、歩行スピードも上がる。リハビリの効果が継続しやすい」と話す。

開発は最終段階といい、来年の秋には商品化する計画だ。

次世代の技術切り開く

今回の取り組みには、複数のスタートアップが絡んでいるのが特徴だ。ロボットに絡む衆知を結集し、次代の技術を切り開く狙いがある。

スーツの要となるワイヤ技術には、イノマーに出資する「SHIN-JIGEN(シンジゲン)」(奈良市)のノウハウが活用されている。運搬など人間の作業を拡張・扶助するロボットの開発やセンサー技術を得意とする。

シンジゲンを立ち上げたのは、パナソニックホールディングス子会社として装着型ロボット、パワーアシストスーツを手掛けていた「ATOUN(アトウン)」の中核メンバーら。奈良市に立地し、かつて作業支援用パワードスーツで国内シェアトップ(金額ベース)に立ったこともあったが、新型コロナ禍のあおりで解散。培った技術を生かそうとメンバーらは新会社に集った。

シンジゲンが開発しているのが、プロトHと同様に装着型ロボット技術を使った筋トレ機器「コンパクト ウエートトレーニング ギア(CWG)」。同社のワイヤ制御の技術を使って負荷をかけ、バーベルやダンベルを使わずに同等のトレーニングができる。長さ120センチ、幅25センチと従来のマシンと比べて体積は100分の1、重さは約16キロとコンパクトさが特徴だ。

シンジゲンは他にも、大阪大発のスタートアップでロボットハンド用センサー技術を手掛ける「Thinker(シンカー)」(大阪市)の事業を支援。シンカーもアトウンの元幹部らが集っており、アトウンから始まった装着型ロボット事業拡大の夢が引き継がれている。(土井繁孝、写真も)

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