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「子供の天職」かなえた一箱 社員は「おまけ」とは言わない お菓子とオモチャで健康育む 「昭和100年」だヨ全品集合 江崎グリコ編

産経ニュース / 2024年10月4日 10時30分

さぁ、今月は『グリコ』の登場だ。昭和のお菓子の中で、『グリコ』はとびきり〝楽しいお菓子〟だった。おまけの「玩具」はもちろん、箱の中のカードを集めると「切手」や「自転車」、なんと「小鳥」までもらえた。楽しかったなぁ…。そこで大阪市西淀川区の「江崎記念館」を訪ねた。案内してくれたのは江崎グリコ広報部社史担当の清水洋司さん(昭和34年生まれ)と館長の大野信二さん(35年生まれ)。31年生まれの筆者とおじさんたち3人はすぐに〝子供時代〟に戻った。

「食べる」と「遊ぶ」

牡蠣(かき)の中に含まれる栄養素「グリコーゲン」から創業者の江崎利一が栄養菓子「グリコ」を発明したのは有名なお話。けれど、なぜオモチャの「おまけ」をつけたのかはあまり知られていない。清水さんによると「利一は商品の構想段階から発想していた」という。

「利一は子供には2つの天職がある―とよく言っていました。ひとつは食べること。もうひとつは遊ぶこと。遊びながら食べ、食べながら遊ぶ。どちらか一方でも満足しない、同じ世界なのだと。ですから一つの箱で、栄養菓子により身体の健康を、オモチャにより心の健康を育みたいと考えていました」

江崎グリコ社員はオモチャのことを決して「おまけ」とは言わない。「主体があって、プラスアルファなのがおまけ。オモチャとアメは両方が一体となってひとつの商品を構成している」(大野館長)からだ。

「江崎記念館」には時代ごとに約4千点のオモチャが展示されている。大正11年の発売当初は「絵カード」を入れていたが、昭和2年から、箱の中に豆玩具やメダルを入れ、4年に「オモチャ箱」を開発した。入れるのはオモチャなら何でもいいというわけではない。事前に幼稚園の先生に意見を聞き①知識や情操向上に役立つ物は〇②危険で衛生面で問題のある物は×③教育上よくない物、射幸心をあおる物も避けたという。

大人も楽しめる

実は子供用の「オモチャ」のほかに大人も楽しめるものがあった。それがプレミアムキャンペーン。「アーモンドグリコ」や「アーモンドチョコレート」の箱の中に《当たり券》が入っていれば、何枚か集めて送ると豪華プレゼントがもらえたのだ。

28年に「子供用自転車」。筆者が生まれた31年には「幸運の小鳥さがし」キャンペーンが行われた。25年に「愛鳥週間」が制定されて以来、一般家庭で小鳥の飼育がブームになっていた。そこで全国組織の小鳥商協会と協力。箱の中に入っている《幸運券》を小鳥屋さんに持っていけば、小鳥と交換してくれたのだ。「特賞・オーム」「1等・カナリア」「2等・文鳥」「3等・セキセイインコ」だった。

32年は「世界の切手」、33年は「世界のコイン」。古代ローマの銀貨や日本の小判や銅銭がもらえた。子供のころの筆者の宝物は、首のひもを引っ張ると「こんにちは」などと話すプラスチック製の「おしゃべり九官鳥」。「アーモンドチョコ」の箱に「♡」マークが出てくるとそれを5枚集めて送るともらえた。41年、筆者10歳のときである。うれしかったなぁ。(田所龍一)

独自性生んだ赤とハート

読者のみなさんは「グリコ」のアメが昭和28年まで「ハート形」だったのをご存じだろうか。

創業当時、森永の「ミルクキャラメル」を筆頭に各お菓子会社のキャラメルの箱の色は黄色、アメの形は四角が定番。後発の「グリコ」は独自性を出すため、箱の色は「赤」、アメは「ハートの形」にした。

とはいえ、当時は「ハート形」のくり抜き機械はまだない。業者に依頼しても「キャラメルは軟らかくて無理」という。そこで、江崎利一は素材の配合や製造温度などを試行錯誤した末、ハート形にくり抜く技術を確立。「ハート形ローラー」と呼んだ。

「実はそのあとが大変だったんです。四角いアメは包装する機械がありましたが、ハート形のアメは1個1個、手作業で包まなければいけない。当時の工場では従業員が黙々とアメを包んでいたそうです」と清水さん。

だが、それにも限界があった。「グリコ」に人気が出ると生産が追いつかなくなったのである。そこで28年から「泣く泣く四角に」。ちなみに62年8月から「ハート形」に戻った。

江崎グリコには7つの社訓がある。その筆頭が『創意工夫』である。

7つの社訓、筆頭は「創意工夫」

江崎利一が考案した「ハート形ローラー」もそうだが、秀逸なのは昭和6年に作られた「映画が見られる自動販売機」だろう。しかも定価10銭のグリコが8銭で買えた。

機械に10銭硬貨を入れると、2銭のおつりとグリコのアメが下から出てくる。そして横20センチ、縦15センチのスクリーンに巷ではやっているチャンバラ映画などが20秒ほど流れる。「ぼくも見たい!」と次の子がお金をいれると続きを見られるのだ。

大野館長によればその頃、グリコは東京進出を狙っていたという。そのための話題作り―とはいえ、箱の中にはしっかりとした映写機が設置された、相当お金をかけた逸品である。

ちなみにほかの6つの社訓は『積極果敢』『不屈邁進(まいしん)』『質実剛健』『勤倹力行』『協同一致』『奉仕一貫』。

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