100年の時刻む 神話の玄関口 旧大社駅、現在は保存修理中 国重文、美しい和風建築 行ってみよう廃線跡
産経ニュース / 2024年12月10日 10時30分
国の重要文化財に指定されている「駅舎」は全国で3件しかない。東京駅丸の内駅舎、門司港駅舎(福岡)は西洋建築で、唯一の和風建築が旧大社駅舎(島根県出雲市)だ。今からちょうど100年前の大正13(1924)年に完成し、出雲大社の参詣客が利用した。路線が廃止され、列車が来なくなっても観光客や地元の人々に愛されている「旧大社駅」は現在、来年12月までの予定で保存修理工事中で見学は不可。工事が終わり、大正建築の美しさに触れる日が楽しみだ。
遊び心随所に
旧大社駅は平成2年に廃止されたJR大社線の終着駅だった。大社線は明治45(1912)年、出雲大社の参詣客を輸送するため、山陰線の出雲今市駅(現出雲市駅)と大社駅間で開通した。大正初期になると参詣客が急増し、当時の駅舎では手狭になった。駅舎の建て替えを望む声があがり、そんな経緯で100年前に誕生したのが現在の旧大社駅だ。
2代目駅舎は出雲大社の玄関口にふさわしく、重厚なたたずまいの純日本風の木造平屋建てで約440平方メートル。ほぼ当時のままの内部は天井の高さが印象的。これは屋根裏の骨組みに部材を三角形に組み合わせた西洋式の「トラス構造」という工法を用いることで実現したという。シャンデリア風の照明や貴賓室もあり、当時ではモダンな感じだったのだろう。
ホームに出ると長い編成の列車が停車できるように広々としている。改札口が多数あるのも、かつてのにぎわいが感じられる。
機能性、格式だけでなく、遊び心も随所にみられる。ホームから線路に下りる階段の鉄蓋には神話「因幡の白兎」にちなんでウサギとガマの穂が描かれている。駅舎の屋根瓦は特製で、いろいろなポーズをとる亀をデザインしたものや蒸気機関車の「動輪」の装飾が施されたものもある。
参詣客で活況
大社線は戦後、活況を呈した。旧大社駅のパンフレットによると、昭和28年の正月3日間、出雲大社に戦後最高(当時)の15万人が訪れ、そのうち2万6千人あまりを列車で運んだ。優等列車も乗り入れた。東京から急行「いずも」が直通運転。関西からも急行「だいせん」が運行され、41年には名古屋-大社間の急行「大社」が誕生し、熱田神宮(名古屋市)と出雲大社の直通急行として話題になったという。
しかし、ほかのローカル線と同じく、道路の整備、自動車の普及などに伴い、利用客は減少。平成2年に78年の歴史に幕を閉じた。旧駅舎を含む駅跡地は平成7年に大社町(現出雲市)が購入し、一般公開を開始。16年には廃線後もほぼ建築当初の姿のままに保存され、地方駅舎の姿を伝える数少ない遺構であるとして、旧駅舎が国の重要文化財に指定された。
令和2年から始まっている保存修理工事は7年12月まで行われ、現在の駅舎は屋根付きの囲いで覆われている。耐震工事も行われ、建設当初から約10年後に貴賓室が整備された昭和初期の姿に復元するという。今回の修理工事後も外観の変更はないとしている。
工事前は駅舎を利用したイベントなども開かれていた。鉄道の駅としての役割は終えたが、歴史を重ねた駅舎は貴重な鉄道遺産としてこれからも生きていく。(鮫島敬三)
◇
一畑電車は洋風建築
旧大社駅のすぐ近くにあり、現在も出雲大社の参詣客が使っている一畑電車の出雲大社前駅。神殿を模した和風建築の旧大社駅と対照的に、こちらはモダンな洋風建築となっている。
丸みを帯びた外観で、窓にはステンドグラスがはめ込まれている。平成8年に国の登録有形文化財となり、21年には旧大社駅とともに、近代化産業遺産に認定された。
構内には映画「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」(中井貴一主演、22年)の撮影に使われたデハニ50形が展示されている。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
富士急行線、一畑電車引退記念タイアップ共同PRや記念入場券セットを発売します。
PR TIMES / 2024年12月12日 16時15分
-
非電化なのに「電車が走る」 架線は“ほんのちょっと”だけ!? 関東の行き止まりJR線に乗ってみた
乗りものニュース / 2024年12月1日 7時12分
-
消えた砂利鉄。1日わずか4往復、終着駅の利用者135人…「西寒川支線」の歴史と廃線跡
オールアバウト / 2024年11月23日 18時30分
-
坂出市「旧石川家住宅」を国の登録有形文化財へ 国の文化審議会が文部科学大臣に答申 香川
KSB瀬戸内海放送 / 2024年11月22日 17時1分
-
南海本線の「要衝」泉佐野、知らない間に駅前一変 関空への乗り換え拠点、東と西で異なる表情
東洋経済オンライン / 2024年11月14日 6時30分
ランキング
-
1「紀州のドン・ファン」殺害事件 無罪判決のカギとなった女性の証言
毎日新聞 / 2024年12月12日 19時53分
-
2両親の執念で3度目刑事裁判 長野中3死亡事故、無罪見直しか 13日に最高裁弁論
産経ニュース / 2024年12月12日 20時30分
-
3被告の母、遺族に謝罪も「通報しなくてよかった」 札幌ホテル殺人
毎日新聞 / 2024年12月12日 19時22分
-
4裁判員「中立の立場で考えた」=無罪判決後に会見―和歌山地裁
時事通信 / 2024年12月12日 18時11分
-
5都議会自民、不記載約20人=100万円超の議員も
時事通信 / 2024年12月12日 21時54分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください