SF戯曲の傑作「ロボット」 出演の水田航生 「わくわくと恐怖が同時に」
産経ニュース / 2024年12月7日 7時30分
人とロボットの共存について問うたSF戯曲の傑作「ロボット」が14、15の両日、兵庫県西宮市の県立芸術文化センターで上演される。スマートフォンや人工知能(AI)によって加速度的に便利になっていく現代において、示唆に富む約100年前の作品にロボット研究者役で出演する俳優の水田航生は「預言書を読んでいるよう。今こそやる意義がある作品だと感じます」と興奮気味に語る。
1920年にチェコの劇作家、カレル・チャペックが発表した作品を、潤色・演出のノゾエ征爾が現代の物語に仕立てた。
舞台はロボット製造会社の工場。人間の労働をロボットが肩代わりするようになった世界で、意思を持つまでに進化したロボットたちの反乱を描く。社長のドミン(渡辺いっけい)、その妻でロボットの地位向上を訴えるヘレナ(朝夏まなと)など個性的な登場人物の中で、水田は反乱後に唯一生き残るロボット研究者のアルキストを演じる。
人間の脅威となる感情を得たロボットたち。100年前は荒唐無稽だったであろう物語も、「フィクションがドキュメンタリーになってしまったんじゃないかという、わくわくと恐怖が同時に押し寄せてきました」と水田は言う。
平成2年生まれの水田にとって、携帯電話やパソコンといった機器は子供の頃から身近だったが、「いつの間にかAIやチャットGPTという、生きものじゃない『考えるもの』が出てきた。すごい時代だと思うんです」。
作品世界が描くように、人力で行われていたさまざまな労働も、今やロボットやAIが担う。俳優という職業ですら「映像の世界では、すでにCGを使って生身の俳優ではできないことができてしまっている」と危機感を口にする。
ただ、「舞台はロボットに取って代わられはしない」とも。「舞台は目の前で肌で感じるものがある。ロボットだけの芝居はミスしなかったり、あえてミスしたりすることはできてもきっと面白くはない。機械的なものではできない、作為的じゃない何かに人間って一番感動するんだと思うから」と人間ならではの〝心〟の力を信じる。
楽しいだけではないという意味では、俳優という仕事も「労働」だ。「難しいけれど、探求してどうにかしてクリアしたいと思える。大変だからこそ、この仕事が好きなんだと思います」とさわやかに語った。芸術文化センターチケットオフィス(0798・68・0255)。(田中佐和)
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