1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

パンデミックが生み出した「距離」を考える 広島市現代美術館「遠距離現在 Universal/Remote」

産経ニュース / 2024年8月9日 20時0分

広島市現代美術館(同市南区比治山公園)は、現代美術を通して少し前のパンデミックの時期を考える「遠距離現在 Universal/Remote」と題した展覧会を開催している。

2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、人の移動を不意に停止させた。しかし、それでも資本と情報は止まることなく国境を超えていった。

日本、米国、中国、韓国などの8作家と1グループで構成する今回の展示作品では、あふれんばかりの情報を扱ったものや福祉国家における孤独死をテーマにした作品群が印象に残る。

ベルリンを拠点に活動する1978年生まれの米国の作家、エヴァン・ロスの「あなたが生まれてから」は、2016年の次女の誕生から昨年まで、自身のコンピューターに蓄積された画像のキャッシュ(一時ファイル)が、序列をつけられたり取捨選択されたりすることなくプリントされ、部屋いっぱいに張り付けられている。

米国のトランプ前大統領の動向など、作家自身が目的を持って選び出した情報だけでなく、企業ロゴやバナー広告など自身が無意識に見たものも含まれる。自分の知らない自分まで記録された自画像といってよく、背後に内在するむなしさまで表現しているかのようだ。

1957年生まれのデンマークの写真家、ティナ・エングホフは社会保障が充実した国家の暗部を見つめる。一人分がはがされたカーペットが写った「心当たりあるご親族へ-男性、1957年生まれ、自宅にて死去、2002年6月16日発見」は、その場における人の死を端的に表している。

社会保障の充実は自立を支える一方で人と人とのつながりに距離を与え、孤独死に結びつきやすい。作者は見る者にそうした問題点を静かに突き付ける。

パンデミックが作った人と人との距離。タイトルのユニバーサル(世界)とリモート(非対面)の間にあるスラッシュは、その象徴のようにも思えてくる。(正木利和)

遠距離現在 Universal/Remote

9月1日まで(8月12日を除く月曜と13日休館)。一般1300円。問い合わせ082-264-1121。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください