「受賞を機に核兵器のない世界を」と被団協の箕牧智之代表委員 「取り組み進める」
産経ニュース / 2024年10月11日 21時40分
世界で唯一、戦争で核兵器を使われた日本の被爆者団体へのノーベル平和賞授与が11日、決まった。長年、反核運動を続けてきた日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の関係者は「活動に光が当たった」と喜びをかみしめ、広島や長崎の被爆者からは「やっと報われた」と涙を流した。広島、長崎への原爆投下から来年で80年。被爆者らは核兵器廃絶への思いを改めて訴えた。
「ニホン ヒダンキョウ」。午後6時過ぎ、広島市役所内で、発表の様子をパソコン画面で見ていた広島県原爆被害者団体協議会の箕牧智之理事長(82)はその瞬間、椅子から浮き上がるように驚いた。「信じられん。(これまでの先人も)喜んでいるはず」と涙を浮かべた。
現実であることを確かめるように、自身の頰をつねった箕牧さん。記者会見で「(核廃絶へ)訴えても訴えても世界に届かず、はがゆい毎日だったが、世界に一つしかないノーベル平和賞。私たち(被爆者)が生きているうちに核兵器をなくしてください」と訴えた。元被団協代表委員で令和3年に96歳で亡くなった坪井直(すなお)さんにも触れ、「坪井さんが元気なうちだったら」とやるせない思いも口にした。
長年の活動が評価された受賞に感無量の様子で、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手になぞらえ、「大谷選手じゃないけど満塁ホームランを打ったようだ」と喜びを表現。今後の活動については「地道に(核廃絶)の取り組みを進める」と力強く語った。
会見中にもお祝いの電話やメールが鳴り止まず、律義に「ありがとうございます」と対応していた。
8歳で広島で被爆して父を亡くし、被団協の一員として世界を飛び回って核兵器廃絶を訴えてきた宮城県原爆被害者の会の木村緋紗子会長(87)は「先人のことを思って泣いています」と語った。うれし涙ではなかったといい、「亡くなった後にもらっても、悔しいじゃないですか。これまで先人たちによる、どれほどの運動があったか。もう少し早くいただきたかった」と述べた。
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の浜住治郎事務局次長は「やったね、うれしいね…」と感慨深げ。ただ近年、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザでの戦闘など、国際情勢は不安定さを増している。「活動を広げていく後押しになる。核兵器がこの世に存在する以上、世界全ての人の問題。一歩ずつ進んでいきたい」と話した。
東京都港区の被団協事務所では、決定直後から、国内外からの電話が鳴りやまず、対応に追われた女性役員は「本当に驚いています」と喜んだ。
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