エヴァンゲリオンは「人造人間」‥人が操縦するのがロボット、原点は「鉄人28号」 ロボット大好き
産経ニュース / 2024年7月2日 10時30分
『日本の巨大ロボット群像-鉄人28号、ガンダム、ロボットアニメの浪漫-』(産経新聞社など主催)を支える〝超マニアック〟な2人目は、この展覧会を監修したインディペンデントキュレーター、山口洋三氏(54)だ。彼は中学1年生で「ロボットアニメに携わる仕事をしたい」と志し芸術系学芸員になったという筋金入りの超オタク。その彼に一番の疑問「今回の展覧会に、なぜ『新世紀エヴァンゲリオン』が入っていないのか」をぶつけてみた。
エヴァは人造人間
なぜ、巨大ロボットの中に「エヴァンゲリオン」が入っていないのか?と問うと、山口氏はよくぞ聞いてくれました―とばかりに、何度も大きくうなずいた。
「そうなんです。ボクももっと反論、批判があると思っていたんです。でも、ほとんどない。エヴァンゲリオンファンのみなさんも『そうだね、エヴァはロボットじゃない』と納得されているようなんです」
山口氏たち展覧会スタッフも、エヴァを入れるかどうかの話し合いは何度も行ったという。それは「巨大ロボットの定義」を決める会議でもあった。
①人間が見上げる大きさであること
②人が操縦すること
③ワクワクさせること
エヴァも3つの条件を満たしている。だが…。
「体は機械で作られていますが、乗り込んだ人間と同化し〝人〟になる。だからエヴァは血を流す。ロボットは血を流さない」。エヴァは「人造人間」と定義されたのである。
あくまでも人が操縦する機械。人の手によって動かされるのがロボット。だからときには悪者にもなる。筆者が子供のころテレビにかじりついて見ていた「鉄人28号」(昭和38年放送開始)もリモコンが命。「そのリモコンを悪者に渡したらあかん!」と何度、叫んだことか。
「時代ですよね。今ならリモコンに『顔認証システム』をつけておけば、奪われても大丈夫なんですから」と山口氏は笑う。たしかに…。そしてこう付け加えた。「鉄人28号は時代、時代に合わせてリメークされているんですよ」
その歴史をたどると…。
■初代「鉄人28号」(昭和38年放送開始)。少年探偵、金田正太郎のリモコン操作で動く。放送開始翌年に開業した「東海道新幹線」や「ジェット機」も登場する。
■「太陽の使者 鉄人28号」(昭和55年放送開始)。ずんどう型から腰がくびれたスマートな体形に変化。石油ショックを経てエネルギー問題が叫ばれた時代を反映し、鉄人の動力源は太陽エネルギー。金田少年はICPOの特別隊員となり、リモコンもアタッシェケース型のビジョンコントローラーに進化した。
■「超電動ロボ 鉄人28号FX」(平成4年放送開始)。より機械的になった体形。携帯電話が大流行した時代を反映し、操作機が片手で持てる銃型の小型ガジェットに。金田正太郎は結婚し子供までいる。息子の名前は正人。子供たちが鉄人の操作を行う。なんと1号から30号までいるというけっこうにぎやかな作品だ。
「1990年代はロボットアニメと子供向けのロボット玩具がセットの時代ですからね。鉄人28号はデザインがシンプルなのでリメークもやりやすい。時代、時代を反映した鉄人が登場してくるんです」と山口氏は解説した。
どの時代でも鉄人28号は巨大ロボットの原点なのである。「現代文化を考えるうえでロボットアニメの存在は外せない。ロボットを知らない世代も、知っている世代も見てほしい。親子で楽しんでもらえる展覧会になっています」
山口氏は「鉄人28号」のように胸を張った。
夢を果たした山口さん
山口さんは昭和44年長崎県出身。物心ついたときには「マジンガーZ」や「ゲッターロボ」がいた。10歳で「機動戦士ガンダム」に出会った。そして中学1年生のときに「将来はロボットアニメに携わる仕事をしたい」と考えた。
「でも、絵が下手だったのでアニメーターは無理。それで、何かないか…と考えて行き着いたのがアートの世界だったんです」。京都大大学院文学研究科(美学美術史専攻)を修了し、平成6年に福岡市美術館の学芸員、令和4年から福岡アジア美術館学芸課長。6年からインディペンデントキュレーター。そして今回、ロボットアニメに関わるという夢を果たしたのである。めでたし、めでたし。(田所龍一)
イベントいろいろ「日本の巨大ロボット展」
「日本の巨大ロボット群像-鉄人28号、ガンダム、ロボットアニメの浪漫-」(京都文化博物館、7月6日~9月1日)では期間中、子供も大人も楽しめるさまざまなイベントがある。
巨大ロボットの日替わり塗り絵
期間中、曜日ごとの日替わりでロボットの塗り絵を配布する。「マジンガーZ」「ガンダム」「鉄人28号」「コン・バトラーV」など8種類。
はじめてのロボットプラモデル講座
8月25日の午前10時半~正午、午後2時~午後3時半。各回20組40人。小・中学生対象(小学生は保護者同伴)。参加費2500円。詳細、申し込みは京都展公式サイトで。
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