1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「カニに感謝」女子高生、未知の微生物を発見 カニ殻からバイオプラ前進

産経ニュース / 2024年6月17日 12時26分

兵庫県豊岡市の近大付属豊岡高校3年、池上(いけがみ)十和子さん(18)がカニの殻をエサにして、環境への負荷が少ないとされるバイオプラスチックの原料を生成する微生物を発見した。本来なら廃棄される地元の名産品を環境保全に役立てるという研究成果。高校生を対象とした世界最大の「科学のオリンピック」で上位入賞するなど国内外で評価されており、池上さんは「カニに感謝」と話している。

環境問題に関心があった池上さん。研究のきっかけは、中学3年の夏休みの出来事だった。「自然界にプラスチックのようなものがあれば、環境に優しい素材がつくれるのでは」と考えていると、たまたま見たセミの透明な羽がプラスチックのように感じられた。

セミの羽には「キチン」と呼ばれる糖の成分が含まれていることが分かり、同様の成分はカニやエビなどの甲殻類の殻にもあることを知った。豊岡市内の城崎温泉などではカニを楽しむ観光客も多く、廃棄される殻は大量にある。うまく利用できないか-。

着目したのが、バイオプラスチックの原料の一つである「ポリヒドロキシアルカノエート」(PHA)という物質。微生物の中には、糖などを分解してPHAをつくるものがある。「廃棄される殻からPHAをつくる微生物を見つけることができれば、コストをかけずにバイオプラスチックができる」と考えた。

このアイデアを高校1年のとき、東大のプログラム「グローバル・サイエンス・キャンパス(GSC)」に応募。採用され、昨年3月から本格的な研究がスタートした。

生物学の専門的な知識はなかったが、東大大学院特任教授の原啓文さん(応用生命工学)が指導。兵庫県香美町の香住漁港で、カニ加工場のカニ殻廃棄場所から土壌を採取。研究室にサンプルを送り、微生物を見つける培養実験を重ねた。

月1回の上京のほか連休を利用して研究室へ。研究室での会話などはすべて英語だったが、英語が得意な池上さんは「十分対応できた」(原さん)という。

実験の結果、土壌からPHAを生成する微生物を発見し、プログラムで行われた研究の中で最高の文部科学大臣賞を受賞。「高校生・高専生科学技術チャレンジ(JSEC2023)」でも最高の文部科学大臣賞を受賞し、2度目の同賞という快挙を成し遂げた。

5月には、アメリカで開かれた「科学のオリンピック」と呼ばれる「「リジェネロン国際学生科学技術フェア(Regeneron ISEF)2024」に出場。世界約70カ国・地域から約1700人が参加する中、「微生物学部門」の4位に輝いた。

一方、発見した微生物のゲノム解析を専門機関に依頼。3月に「これまで解析されていない未知の微生物種」であることが判明した。

原さんは「大量廃棄されるカニ殻の有効活用につながる可能性がある。地方から出発した大きな研究成果といえる」と評価。池上さんは「土壌の臭いは大変だったが、大きな成果を挙げることができた。香美町のカニに感謝したい」といい、「将来はこの微生物を活用し、社会貢献を目指して起業したい」と夢を膨らませている。(谷下秀洋)

バイオプラスチック

植物などの生物資源からつくられたプラスチック。含まれる炭素はもともと大気中で循環していると考えられるため、新たな温室効果ガスを発生させないなど環境への負担が少ないとされる。生産量が少なく、コスト高が欠点となっている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください