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チョコレートが包む甘い芸術作品 フェリシモのミュージアムで有名パティシエが出展

産経ニュース / 2024年11月15日 10時30分

「スイーツの街」として知られる神戸にチョコレート好きが足を運ぶ場所がある。通販大手のフェリシモが企画・運営する「フェリシモ チョコレート ミュージアム」(神戸市中央区新港町)だ。世界中から集めたチョコレートのパッケージ約1万8千点を常設展示。現在開催中の企画展では日本を代表するパティシエの一人、小山進氏がチョコレートで作った恐竜像が注目を集めている。

笑顔を生む菓子

フェリシモは昭和40年創業で大阪に本社を置く会社だった。神戸市の「ファッション都市宣言」に魅力を感じ、平成7年9月に同市に移転した。移転前の同年1月17日に阪神・淡路大震災が発生。移転を白紙に戻すことも考えられたが、被災地とともに発展、成長を目指すことを決意した。以来、地域への貢献を強く意識した事業展開を進めてきた。

チョコレートミュージアムはそんな歴史と無縁ではない。元町の旧居留地にあった旧本社より海寄りの場所に自社ビル建設を計画する際、多くの人に開かれ、地域に喜んでもらえるミュージアムを建物内につくることにした。

展示のテーマは「チョコレート」と決めた。約150年前に開港された神戸は海外との交流の玄関口として発展し、洋菓子文化が栄えてきた。ユーハイム、モロゾフといった神戸発の老舗ブランドはその象徴だ。今もパティシエが腕を競う多種多様なお店があり、地元に限らず全国からファンを集めている。「スイーツ」は神戸の重要な観光資源の一つに数えられている。

「チョコレートには食べる人、作る人、贈る人、みんなを笑顔にするやさしさと力がある」と考えたフェリシモは約25年前、世界で発掘したチョコレートのカタログ『幸福(しあわせ)のチョコレート』で販売を始めた。バイヤーが各地を訪れ、パティシエと直接会い輸入する。最新の2025年版では31カ国、日本初が19社の商品が掲載されている。売り上げの1%はチョコレートの主原料、カカオを栽培する農家の生活向上や児童労働をなくす活動に使われる。

カタログに並ぶチョコレートは、味もさることながら、パッケージデザインにはショコラティエ(チョコレート菓子専門の職人)の思いや創造性が余すことなく表現されている。捨てるには惜しく、鑑賞に十分値するものと考えた。ショコラティエや菓子メーカー、広く一般からもパッケージを寄贈してもらい、コレクションとして保管、公開することにした。

世界中から寄贈

ミュージアムは令和3年10月にオープンした。受付前にはフェリシモがお勧めするチョコレート菓子のセレクトショップがあり、購入できる。

入り口でミュージアムのロゴマークのプレートが目に入る。CHOCOLATEの文字は「宝石になぞらえたチョコレートの一粒一粒をイメージ、全体が一つの宝石箱のようになっている」とミュージアムの能勢加奈子マネージャーは説明する。

チョコの甘い香りがあたり一面に漂い、館内へと誘い込まれる。香りの元はカカオハスク(カカオ豆の種皮)を敷き詰めたオブジェだ。

常設展のコーナーは「見せる収蔵庫」と位置付けた。床から天井まで壁一面695段のショーケースを配し、約500ブランド、約1800点のパッケージを保存・管理しつつ鑑賞できる仕掛けとなっている。「後世に残すべき貴重な資料」(能勢マネージャー)と自負する。

今回の企画展は10月12日に始まり、来年4月6日まで。小山氏がこの展覧会のためにチョコレートで作った恐竜像が10体並ぶ。幼少期に粘土遊びに夢中になった小山氏はパティシエとして「チョコレートの固まる、溶ける、高速回転で粉砕すると溶ける前に一瞬粘土のような状態になる性質や、その扱い方を学んだ」という。

企画展のパートⅡでは小山氏が作るお菓子のパッケージが披露されている。小山氏はお菓子を食べる子供たちの姿を想像しながら創作する。お菓子のパッケージは「子供たちが手に触れることを許されたアート作品」と定義、「ひとつひとつにさまざまな意図を込めた」としている。

小山進(こやま・すすむ)昭和39年、京都市生まれ。神戸の「スイス菓子ハイジ」に入社後、数々の洋菓子コンクールで優勝し独立。平成15年、兵庫県三田市に「パティシエ エス コヤマ」を開業した。ショコラティエとしては2019年に「世界のトップ・オブ・トップ ショコラティエ100」に選出、「インターナショナル・チョコレート・アワーズ」で2013~17年まで「世界大会」に連続して複数作品で金・銀・銅賞を獲得するなど国際舞台で活躍している。

石村嘉成展とコラボ

チョコレートミュージアムでは兵庫県立美術館ギャラリー棟で開催中の「石村嘉成展 ~いのちの色たち~」と連携して石村氏のアクリル画5点も特別に展示している。カカオが栽培されるカカオベルト地帯に生きる動物を描いた作品で「カカオの森に生きるいのち」と副題をつけた。

フェリシモは石村氏の作品をパッケージデザインに取り入れたカカオフィナンシェを企画。コラボ商品としてミュージアム、美術展それぞれで販売している。

石村氏は愛媛県新居浜市在住。2歳で自閉症と診断されるも家族と周囲の支援で画家となり、第2回新エコールドパリ浮世・絵展で優秀賞を受賞した。動物、昆虫、花などの「いのち」の輝きを、独特な色彩とダイナミックな画風で描く。

同展の展覧会は12月8日まで。(安東義隆)

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