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「人生を楽しむ人」を集めたサイト図鑑でキャリア教育 大阪・松原市教委が静岡大と開発

産経ニュース / 2024年9月20日 10時30分

学校のキャリア教育に一石を投じる動きが生まれている。大阪府松原市教委が今年度から、静岡大学教育学部の塩田真吾准教授の研究室と連携して開発を進めているウェブサイト「COMPASS(コンパス)」。中学生が自分にとってのロールモデルを見つける手がかりとなるよう、仕事だけでなく趣味や余暇、子育てなど「人生を楽しむ人たち」(=協力者)を集めたライフキャリアプラン図鑑だ。従来のキャリア教育の中心的な職場体験は実施時期や業種などが限定されがちだが、コンパスは幅広い人材がそろう協力者といつでもやり取りができ、多様な考え方に触れられるのが強み。市教委は「サイトを人生のコンパス(羅針盤)として活用してほしい」としている。

職場体験から転換

コンパスは松原市の公立中学校に通う生徒のみが利用でき、プライバシー保護や安全性の観点から一般には公開されない形で運用する。

現在、登録されている協力者は32人。弁護士やアナウンサー、精神科医、イラストレーター、カフェ経営者、子育て支援のNPO代表、市職員、大学生ら、松原市と何らかの関わりがある人たちで、面談などを経て市教委が決めたという。「従来の職場体験では出会うチャンスがなかったような人たちともつながることができる」と話す市教委の美濃亮教育長も登録リストに名を連ねる。

プロフィールのページでは、小中学生の頃はどんな子供だったか、進路に悩んだときにどうやって決めたか、人と向かい合うときに何を大切にしているか、夢中になっているものや挫折体験などがQ&A方式で紹介されており、協力者それぞれの生き方や働き方、価値観、人生観などが浮き彫りになっている。

ユニークなのは「仕事」「趣味」「感情」の3つの分類で「#(ハッシュタグ)」を活用した検索機能。ハッシュタグの組み合わせによって思いもよらない人とつながる可能性があり、「自分の『好き』を分解することで新しい『好き』が見つかり、興味が広がる」と塩田准教授。「従来のキャリア教育は仕事面が中心だが、コンパスは仕事だけでなく人生をどう楽しむのか、ライフキャリア全体を考えるようなサイトを目指している」と語る。

さらに、コンパスを利用する生徒は個人が特定されないようにニックネームで、気になった協力者に質問や感想などのコメントを送ることができ、協力者から返信も受け取れる。これらのやり取りは掲示板形式で表示され、多様な考え方を知る仕組みとして全利用者が閲覧できるようになっている。また、生徒や協力者のコメントは、誹謗中傷や個人情報など不適切な表現がないかなどを市教委と塩田研究室が確認した上で掲載しているという。

自宅にいながらアクセス、不登校生らの活用も期待

コンパスの試験運用は6月上旬から始まり、1学期終了までに松原市立中学校4校の計28人の生徒が参加した。

ある中学校では、自分の教室に入りづらく別室で学習する生徒たちが、塩田研究室のスタッフの説明を受けながらコンパスを体験。「さまざまな理由で学校や教室に行きづらくなっている生徒も、自宅などからアクセスできる。協力者の人生に触れることで、将来をどう描くか考えるきっかけになるかもしれない」と美濃教育長は期待する

別の中学校の生徒たちは体験後の取材に、「今まで自分の好きなことをきちんと考えたことがなかった。友達の好きなことも知ることができた」「絵を描くのが好きで、サイトには趣味が合う人が多くて楽しかった」「(協力者を)もっと増やしてほしい」などと述べた。

市教委と塩田研究室は今後、参加生徒を対象に行ったアンケートの結果などをもとにサイトを改善。参加する生徒や協力者を増やしながら試験運用を重ね、来年度からの本格運用を目指す。

「学びへのモチベーション高めたい」

コンパスを発案した美濃教育長に、その狙いや新型コロナウイルス禍を経てのキャリア教育のあり方などについて聞いた。

「出発点は、松原市の長年の課題である学力向上。授業改善や指導力向上などに取り組んでいるが、全国学力テストでの苦戦が続く。家庭学習や読書の時間が少ない一方で、ゲームやSNSなどに費やす時間が多いことがわかり、子供たちの学びへのモチベーションを高める必要があると考えた。自分なりのロールモデルを探し、こういう仕事に就きたい、こんな人生を送りたい、そのためには何をすればいいのかと思ってもらえるきっかけを作りたかった。

これまでのキャリア教育は職場体験が中心で、実施時期や協力してくれる事業所、業種や体験内容などが限定されがちだった。学校現場や事業所の負担も大きい。

その職場体験も新型コロナウイルス禍で中止になった。受け入れ先との関係性が途切れ、復活させるにはかなりの労力が必要だ。教員の働き方改革もある中で、はたして従来通りの形で再開すべきなのか。そもそも、働くことへの意識がまだ希薄な中学生の興味や関心に合った体験になっているのか。そんな問題意識をもとに、これからのキャリア教育のあり方を模索する中でたどりついたのが、いろんな大人の生き方、考え方にいつでも触れることができるコンパスだ。協力者の開拓を精力的に進め、学力向上とキャリア教育を推進できるものにしていきたい」

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