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水没するラグビーの聖地 川の氾濫から市民を守る「遊水地」 大阪・花園中央公園 西日本の水

産経ニュース / 2024年8月14日 10時0分

ラグビーの聖地、花園ラグビー場などが立地する花園中央公園(大阪府東大阪市)。球技や市民憩いの場として親しまれる同公園が、大雨時には川からあふれ出た水をため込む「遊水地」になることをご存じだろうか。完成以来20年余り、数々の大雨による災害を防いできた。レジャーの場だけではない、同公園のもう一つの顔をみてみよう。

ラグビー場に

「公園が湖のようになっている」

6年前の平成30年7月6日。前日まで降り続いた大雨をカメラで記録しようと、花園中央公園を訪れた東大阪市広報課の西川遼さんは、初めて見る光景に目を疑った。

ふだんは市民らが散歩やジョギング、スポーツを楽しむ場である多目的芝生広場が水没。年末年始の全国高校ラグビー大会の一部試合でも使用され、花園ラグビー場第3グラウンドの別称もあるトライスタジアム(多目的球技広場)や、野球関西独立リーグの大阪ゼロロクブルズがホーム球場とする花園セントラルスタジアムの一部も浸水していた。

この大雨は、梅雨前線などの影響で広島や岡山、愛媛の各県を中心に甚大な被害が出た「西日本豪雨」。西川さんは「大雨で川からこんなに大量の水が公園へ流れ込んだのか」と驚いたという。

水ため込む

公園の水没は、大雨に備えた意図的な〝仕掛け〟だ。同公園約27・48ヘクタールの一部(約14ヘクタール)は、大阪府が平成14年までに整備を進めてきた「花園多目的遊水地」という役割ももっている。

同公園の東側を流れる恩智川が一定の水位を超えると、水が遊水地へ流れて一時的にため込む。水位が下がれば逆に川へ水を戻す仕組みだ。川の氾濫被害を防ぐほか、寝屋川水系の下流域や下水道へ水が大量に流れ込むのを抑える。

花園多目的遊水地は、3段階で大雨に対応。30年7月の場合、10年に1度の大雨に対応することを想定したBゾーンの多目的芝生広場に水が流れ込んだだけでなく、30年に1度の大雨を想定したCゾーン(トライスタジアムや花園セントラルスタジアム)にも川の水をためる形になった。

大阪府によると、恩智川は生駒山に降った雨が一気に流れ込むため増水しやすい河川といい、30年7月の豪雨で花園多目的遊水地にたまった水量は計約14万2千立方メートル。16年以降の記録では、16年10月の台風23号(貯留量約6万2千立方メートル)を大幅に上回って過去最大となる大雨だった。

寝屋川流域

府によると、大阪平野のなかで、南北は淀川と大和川、東西は生駒山系と上町台地に囲まれたエリアは「寝屋川流域」と呼ばれ、東大阪市や枚方市など府東部の12市にまたがる。大半が「河内」の地名で親しまれている地域だ。土地の高さが河川より低いところが多く、古くから浸水被害に悩まされてきた。寝屋川流域では、他にも遊水地が整備されている。

担当する府寝屋川水系改修工営所建設課企画防災グループの島村冴俊(さとし)副主査は、寝屋川流域が「府の面積の約7分の1を占め、府人口の約3分の1が住んでいる」と人口の集積地であることをあげ、都市化が進んだ地域での水害対策は欠かせないと説明する。

府は、国や流域の各市と協力し、河川や下水道、遊水地などを組み合わせた寝屋川流域の総合的な治水対策を段階的に実施。大阪市内などの地下では、トンネル状の地下河川の整備も進めている。

府はこれらの治水対策を進めたことにより、30年前は浸水被害が発生していた1時間当たりの最大雨量40ミリの大雨が降った場合でも「おおむね浸水被害を防げるレベルになってきた」(同グループの荒木大地主査)としている。

水運の発展を支えた一方で、大雨時に猛威をふるった大阪の河川。ラグビーの聖地に設けられた施設からも、水との闘いの一端が垣間見える。(西川博明)

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