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伝統芸能の知恵結集 「鬼滅」の世界を能楽で壮大に 大槻裕一「スケールの大きさ感じて」

産経ニュース / 2024年8月15日 13時30分

伝統芸能の強みは、何百年もの歴史の中で蓄えられてきた、芸や演出の「引き出し」の多さにある。それを最大限生かして2年前に誕生した、人気漫画が原作の「能 狂言『鬼滅の刃』」が8月21~25日、大阪市北区のSkyシアターMBSで上演される。能楽堂以外での公演は初めてで、主人公の竈門炭治郎と妹の禰󠄀豆子の二役を勤める観世流シテ方の大槻裕一は、「空間の大きな劇場ならではの演出もあり、能楽のスケールの大きさを体感してもらえるはず」と生き生きと語る。

8月21-25日、大阪で「能 狂言『鬼滅の刃』」

「鬼滅の刃」(原作・吾峠呼世晴、集英社ジャンプコミックス刊)は、鬼になった妹の禰󠄀豆子を人間に戻すため、炭治郎が鬼の討伐組織「鬼殺隊」の剣士となり鬼と戦う物語。能狂言版は、蜘蛛の少年鬼、累との決戦「那田蜘蛛山(なたぐもやま)」のエピソードを中心に創作した。

初演当時、エンタメ性あふれる漫画と格式高く堅いイメージのある能、という意外な組み合わせが話題になったが、実は親和性が高い。

裕一は「鬼滅の刃は『鬼を退治して良かった』だけでなく『なぜ鬼になってしまったのか』が描かれている。能も鬼とか亡霊とか、殺され弔われる側の思いを描いていて、それが共通点だと思った」と語る。

一方で「漫画の世界観」を保ちつつ「能らしさ」を守るギリギリのラインを探る作業は難航した。

炭治郎、善逸(野村裕基)、伊之助(野村太一郎)の同期3人のコミカルな狂言シーンの稽古では、漫画同様にそれぞれの髪を赤、黄、青に染めたこともあったとか。裕一は「結局その案は却下で、各テーマカラーの鉢巻きに落ち着いたんですけどね」と笑う。

一から創作した能狂言版だが、随所に古典作品の要素がちりばめられている。

随所に古典作品

観客を最初に能狂言版の世界に引き込む、炭治郎の父が息子へと竈門家に伝わる「ヒノカミ神楽」を伝承するシーン。能楽堂を緊張感で包む鋭い囃子と激しい動きは、能「道成寺」から、蛇体が鐘に入って本性を現す直前の「乱拍子」や「急之舞」を参考にした。

裕一は「能だから静かに始まると思いきや、あり得ないくらいのテンションで大爆発して始まる。お客さまの注意を引く演出です」と狙いを語る。

累(大槻文蔵)との戦いでは、累が赤い糸を大量に投げて攻撃したり、首が切り落とされたり、視覚的にも刺激的な演出が連続する。「糸は能の『土蜘蛛』や狂言の『蛸』、首が落ちる仕掛けは能『大江山』からヒントを得ています」(裕一)。演出の野村萬斎をはじめ、全員の知恵と経験の結晶だ。

若い世代や子供も

客席には普段の能公演よりも若い世代や子供の姿も目立った。裕一は、能初心者の観客から「禰󠄀豆子の場面が一番面白かった」という感想が寄せられ、驚いたという。

「禰󠄀豆子の夢の中、という設定で、最も『能らしい』構成。退屈なのでは…と削ることも議論した場面です。能の幽玄の世界観を『面白い』と感じてもらえたのがうれしかった」と振り返る。

これまで全国の能楽堂で35公演を上演したが、公演中は毎日、新たな演出を試したという。裕一は「まだもうちょっと面白いことできるよね?という思いを、今回の劇場公演につなげたいです」と気合たっぷりに語った。

問い合わせはキョードーインフォメーション(0570-200-888)。(田中佐和)

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