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「UMBRO」100周年、オンリーフットボールブランドとして次の100年へ 北川信行の蹴球ノート

産経ニュース / 2024年6月18日 11時0分

英国発祥のスポーツブランド「UMBRO(アンブロ)」が今年、設立100周年を迎えた。日本では1998年に商標使用権を取得した株式会社デサントがサッカーに軸足を置いた「オンリーフットボールブランド」の形で、製品開発や販売を行ってきた。取材に応じたアンブロのマーケティングを担当する松井徹部長代行は「アンブロは伝統と歴史があり、その中で新しい製品を生み出してきました。常にブランド自身を刷新し、消費者やユーザーの動向、社会の変化に合わせて発展してきました。多くの人たちと一体感を持って取り組んできたことが、ブランドとしての財産になっていると感じています」と節目の年を迎えた感慨を話した。

サッカーにつながる全ての人と一緒に

アンブロの特徴の一つが、ひし形を重ねた「ダブル・ダイヤモンド」のロゴだ。関西ではサッカーJ1、ガンバ大阪のユニホームサプライヤーを長年務めていたことを知っている人も多いだろう。ただ、サプライヤー契約が終了した今も、大阪府堺市にある堺市立サッカー・ナショナルトレーニングセンター(J-GREEN堺)をはじめとしたサッカー場を訪れると、多くの選手がダブル・ダイヤモンドのグッズを身に付け、ボールを蹴っている姿に出くわす。それほど、サッカー関係者にはなじみ深いブランドだといえる。

「長くサプライヤーを続けてきましたので、かつてはアンブロの象徴は日本ではガンバ大阪さんだったのかなとは思っています。契約に関しては一旦終わりましたが、チャンスがあればまた(いくつかのJリーグクラブのユニホームサプライヤーとなることを)取り組んでいきたいと考えています」と将来を展望した松井部長代行は「われわれはサッカーを中心にした、オンリーフットボールブランドですので、サッカーに関してはカテゴリーに関係なくこだわりを持っています。特に育成年代から大人になっていくところは、モノづくりもそうですし、プレーをする機会を提供する大会もそうです。一緒に成長していけるブランドになっていきたいと思っています」と強調する。

手掛けていることの一つが、「UMBRO CUP(アンブロカップ)」の開催だ。もともとは1995年にイングランドで催されたサッカーの国際親善大会が発祥だが、日本国内では育成や普及に主眼を置き、小中高校生の大会を主催してきた。昨年はU-18(18歳以下)やU-12(12歳以下)、女子などの大会を11会場で開催し、延べ169チームの3155人が参加した。「大会は非常に大事だと思っています。私たちが競技やプレーヤーに接する機会をつくるのが大切で、そういうことが一緒にブランドを育てていくことにつながると思います」と松井部長代行。加えて「現場」を意識し、現場でサッカーに関わる人たちに寄り添った製品開発も進めてきた。

例えば、今では当たり前になっているが、日本の育成年代のサッカーの現場で、熱中症対策として帽子を被ることを最初に提案したのも、アンブロだった。松井部長代行は「サッカーをするときに帽子を被る文化はそれまでなかったのですが、継続して取り組むことで、今では帽子を被っていない小学生は見ないぐらいになりました」と手応えを口にする。さらに、子供のころからヘディングをすることの悪影響が欧州で指摘されるようになり、ヘディング禁止の動きが広まりつつあることを受け、プロテクトヘッドバンドを開発し、着用を推奨。こちらはまだスタートしたばかりだが、「脳の衝撃であったり、衝突や転倒をした際のショックの低減だったり…。けがの防止につながるエビデンスも出ています」と効能を説明した松井部長代行は「われわれは影響を与えるところに着目し、時間をかけて開発してきました。昨年から展開していますが、啓蒙(けいもう)活動していきながら普及させないといけないと考えています。最初はサッカーだけでしたが、転倒の危険があったり、接触したりする競技はほかにもあります。たとえば、体育の授業でも役に立つかもしれません」と力説する。

さらには、「フィールドで戦っているのは選手たちだけではない」とのコンセプトで「コーチャーズ」と題して指導者向けのウエアなども展開。審判員や、子供たちをサッカー場に引率する保護者のための製品開発も行っているという。

松井部長代行は「われわれの強みになっているジュニアカテゴリーの部分に関しては、子供たちの成長や安全に寄り添った製品開発を行っています。引き続きやっていきながら、サッカーの普及につながればと思っています。選手や保護者が困っている課題を解決できる製品や、パフォーマンスアップにつながる製品の開発も引き続き行いたいと思います。社会の変化に適応しながら、サッカーにつながる全ての人と一緒にブランドとして成長していけたら。存在意義のあるブランドとしてバトンをつなげていきたいと思っています」と次の100年に向けた思いを語った。

歴史、伝統と現代のサッカー文化を結び付ける

松井部長代行との主な一問一答は次の通り

--アンブロが100周年を迎えた感想は

「100年を迎えるブランドは世界的にも数少ないと思います。アンブロは伝統と歴史があり、その中で数多くの新しい製品を生み出してきました。アンブロは常にブランド自身を刷新し続けることで、消費者、ユーザーの動向や、社会の変化に合わせて発展してきました。この100年間、サッカーを中心に、多くのチームのサプライヤーを務めたり、ファッションブランドとのコラボレーションをしたり、多くの人たちと一体感を持って取り組んできました。それが100年の流れの中で、ブランドとしての財産になっていると感じています」

--オンリーフットボールブランドとも言われている

「日本に関してはサッカーに軸足を置いています。他のブランドはサッカーだけではなく、さまざまな競技をしていますよね。アンブロは日本ではサッカーに軸足を置き、サッカー選手に寄り添った製品の開発などに取り組んでいます」

--アンブロの長い歴史の中で印象に残っているエピソードは

「2002年のワールドカップ(W杯)日韓大会ですかね。アンブロはイングランド代表のサプライヤーをしていました。W杯、イングランド代表、そしてデビッド・ベッカム選手…。当時は営業の担当していましだか、熱狂の日々でした。サッカーファンではない世の中の人がサッカーのユニホームを着て街を歩く文化が生まれたのは、2002年のW杯だったのかなと思っています。それまではスタジアムに行って着替えるのが普通でした。歴史が変わったタイミングに携われたというので、印象に残っていますね」

--個人的にも、イングランド代表のユニホームはアンブロとのイメージがある

「それまでのW杯はサッカーが好きな人が見る大会だったと思います。日本で開催されたことで、文化になった感じはします。われわれが輸入したイングランド代表のユニホームが飛ぶように売れる、みんながほしがりました。ここまで売れた商品はなかなかないと思います」

--アンブロが育んできたフィロソフィー、哲学とは

「オンリーフットボールブランドというのが根底にあると思っていますので、そこは大事にしています。また、常に挑戦していくことであったり、オリジナリティーとスタイリッシュさを与えるブランドであることも目指しています。100年の歴史、伝統がありますので、その部分と現代のサッカー文化を結び付けた独自性のあるものにしたいですね。さらにデサントの優れた機能性であったり、デザインであったり…。そういったものを追求した製品を生み出していくことを常に頭に入れて動いていく形ですね」

--日本で製品開発をしていく上では

「英国発祥のブランドなので欧州をはじめ世界のブランドホルダーとの連携もしています。ただ、日本ではデサントが作る製品になりますので、デサントがこだわっているモノづくりをアンブロというブランドで表現していくことになります。日本の規格で、日本のサッカー選手の課題解決やパフォーマンス向上も含めて取り組んでいます。そこは、こだわっている部分があります」

--育成年代向けの製品を開発するだけでなく、育成年代のサッカーの普及や発展にも取り組んでいる

「製品開発に関してはジュニアの分野に強みがあると思っています。そこに関しては、アパレルや備品などトータルで開発を進めています。子供の成長に合わせ、けがの予防につながったり、サッカーが嫌いにならないようにしたり、という部分も含め、一緒に成長できたらと考えています」

--今回の100周年では、ヴィンテージユニホームのセレクトショップ「BENE(ベーネ)」とコラボレーションした

「サッカーでもヴィンテージや古着が注目され、ファッションに欠かせないアイテムになっています。軸足はサッカーに置いているのですが、ブランドの見せ方、表現の一つとして、ファッションにも落とし込んでいます。東京・渋谷で4日間、ポップアップストアを開催しましたが、もともとサッカーが好きな人とともに、ファッションに興味を持っている人にもたくさん集まっていただきました。こうしたコラボレーションで、サッカーだけでは集まらないユーザーをはじめ、いろいろな人に関心を持っていただければと思います」

(サンケイスポーツ編集委員)

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