強硬トランプ氏、関税で圧力駆使 移民・薬物の阻止狙い対象国や分野を拡大
産経ニュース / 2025年1月31日 17時52分
トランプ米大統領が自国の要求を相手国に飲ませる圧力として、関税を活用する姿勢を鮮明にしている。米国はカナダ、メキシコと密接な貿易関係を持ち、関税を引き上げれば両国だけでなく自国にも打撃が及ぶ。それでも関税引き上げを断行するのは、優先課題とする不法移民対策への協力を両国に求め、最大限の譲歩を勝ち取る狙いがある。
カナダから国境対策強化引き出す
トランプ氏がカナダ、メキシコからの輸入品に25%の関税を課すとした1日を控え、カナダのジョリー外相が1月29日、米首都ワシントンに入った。ルビオ米国務長官らと会談し、関税を発動しないよう説得を試みたとみられる。
トランプ氏は第1次政権(2017~21年)でもカナダ、メキシコに高関税を課すと脅し、両国との3カ国で構成する北米自由貿易協定(NAFTA)を改定させることに成功した。
トランプ氏は、不法移民や合成麻薬「フェンタニル」の米国への流入を止めるため、国境を接するカナダとメキシコに対策強化を要求してきた。
トランプ氏の圧力を受け、カナダのトルドー首相が昨年11月、南部フロリダ州にあるトランプ氏の私邸に閣僚を連れて訪れた。カナダ・メディアによると、カナダ政府はこれまでに、国境監視などに13億カナダドル(約1400億円)を投じる計画も表明した。
関税で米のエネ価格上昇も
カナダとメキシコにとり、巨大市場の米国は極めて重要な輸出先であることは言うまでもない。対米輸出品への関税が上がれば、カナダ、メキシコ両国の景気に「深刻な悪影響が出る」というのがエコノミストの一致した見方だ。
一方、自動車産業やエネルギー分野などでは、米国にとってもカナダとメキシコは重要な取引相手だ。特にカナダは、エネルギーの対米輸出で一定の規模を持っており、カナダから輸入する燃料に課す関税を引き上げれば、米国内の価格を上昇させる要因になる。
トランプ氏は、強制退去させる不法移民を乗せた軍用機の着陸を南米コロンビアが拒否した際、同国に関税発動の圧力をかけて、協力を約束させた。さらに、中露などで作るBRICSにも高関税を課すと示唆。米ドル以外の通貨体制を推進する動きを牽制している。
トランプ氏が関税の圧力を振りかざし、要求を突き付ける相手国・地域は拡大している。要求の対象分野も多岐に渡っており、主に貿易赤字の解消を迫った第1次政権時よりも関税の圧力を最大限に駆使している。(ワシントン 塩原永久、坂本一之)
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