バンス氏「敵」から副大統領候補に トランプ氏長男と親密、「米国を再び偉大に」継承へ
産経ニュース / 2024年7月16日 20時13分
11月の米大統領選に向け、トランプ前大統領(78)が副大統領候補に指名したJ・D・バンス上院議員(39)。かつてはトランプ氏に批判の矛先を向けていたが、今やトランプ陣営のスローガン「米国を再び偉大に(MAGA)」の信奉者となり、副大統領候補の座を射止めた。転向の背景には何があったのか。
「文化的ヘロイン」と評したことも
バンス氏は、トランプ氏が大統領に初当選した2016年、当時の共和党主流派と同じく、トランプ氏支持を拒む「ネバー・トランパー」だと公言していた。過激発言で支持を得るトランプ氏の手法を「文化的ヘロイン」と評したこともある。
トランプ支持者たちはバンス氏に不信感を抱いた。バンス氏が22年中間選挙で上院議員を目指し、中西部オハイオ州の予備選を戦っていたころ、取材した元軍人の男性は「あいつは信用できない」と吐き捨てた。
それからわずか約2年。その間にバンス氏は上院議員に当選しただけでなく、批判したトランプ氏の副大統領候補に駆け上がった。背景にあるのはトランプ氏の長男、ジュニア氏との蜜月だ。
「J・Dはとても親しい友人だ」。22年の予備選さなか、バンス氏の対話集会でジュニア氏は、バンス氏との友情を何度も強調した。遊説にも同行し、バンス氏が「トランプ家」が推す候補との印象を振りまいた。
バンス氏は予備選でトランプ氏の推薦を取り付けたが、ジュニア氏の後押しがあったとされる。
米誌タイムによると、バンス氏がバイデン政権のウクライナ軍事支援を非難したことに対し、ジュニア氏が興味を抱いたことが接近のきっかけだという。2人はほぼ毎日、電話やメッセージのやり取りをする仲とも伝えられている。副大統領候補の選考にもジュニア氏の存在が作用したことは想像に難くない。
過去のトランプ氏批判を封印
バンス氏は過去に行ったトランプ氏批判を完全に封印している。なりふり構わぬ転向は、トランプ支持者の怒りを鎮めることにもつながった。
貧困家庭から軍務を経て名門大学に進み、ビジネスで成功したバンス氏は、現代の「アメリカンドリーム」の体現者だ。政治経験の浅さは、「政治エリート」に敵意を抱く層を引きつけてきたトランプ氏の戦略にも合致する。
トランプ氏が当選すれば、バンス氏は次期大統領選をうかがう存在となる。トランプ父子はバンス氏に恩を売り、MAGA路線継承に布石を打ったとも言える。(ミルウォーキー 大内清)
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