「80年代の大物」風ファッションで聴衆魅了 軽快ダンス、過激発言…トランプ氏「解剖」
産経ニュース / 2025年1月21日 17時1分
ドナルド・トランプ氏(78)の二度目となる大統領就任に伴い、「またトラ」の米国が本格的に始動した。超大国の新たなリーダーの一挙手一投足に、世界中から視線が注がれた。毀誉褒貶(きよほうへん)の激しい人物像を、「身ぶり」「言葉」「服装」という3つのキーワードから読み解いてみる。
ジェスチャーで「偉大な指導者」演出
「パリ協定を離脱する」。日本時間の21日未明、トランプ氏は就任式後の演説で地球温暖化対策の国際的な枠組みからの離脱を宣言すると、聴衆の喝采を浴びながら、両手を大きく広げてみせた。
「体を大きく見せ、自らがいかに偉大なリーダーであるかを表現できる」。長崎大准教授のスピーチコンサルタント、矢野香氏(心理学・コミュニケーション論)は、過去の演説でもしばしばみられたトランプ氏の身ぶりをこう説明する。「彼は『グレート』『ベリー』など簡単で強調する形容詞と併用することが多く、聴衆の印象に残りやすい」
トランプ氏の集会では、本人が曲に合わせて軽快に小躍りする「トランプダンス」も広く知れ渡っている。矢野氏は「短時間の単純な動きで、切り抜き動画を作成しやすい。そのため、拡散もされやすい。まさにSNS(交流サイト)時代型の演説だ」と話す。
「不法移民はペットを食べる」と差別発言
発言も注目の的だ。大統領選では、昨年9月の候補者討論会で不法移民に対し、「彼らは犬や猫、住民のペットを食べている」と発言。同志社大大学院の三牧聖子准教授(米国政治外交)は「事実と異なり、批判されるべき差別的な内容だが、一定の〝効果〟があった」と指摘する。
三牧氏によると、ビザを持たない移民について、民主党は「非正規移民」と呼ぶのに対し、トランプ氏は「イリーガル・エイリアン(不法外国人)」と呼ぶ方針を打ち出している。三牧氏は「大統領になる人物がしていい発言ではないが、移民問題にしっかりと対応するという決意表明として受け止められている面もあった」という。
「Z世代」と呼ばれるおおむね20代前半の世代に支持されるインフルエンサーの番組にも積極的に出演。政治への関心が低い若い男性に向けて「総合格闘技など、趣味の話をして親しみを抱かせた」といい、若者の支持をとりつけた。
ファッションで懐古的なリーダーを再現
ファッションにも戦略がある。服飾専門家の鴫原(しぎはら)弘子氏は「スーツは肩幅の広いスタイルで伝統的な男性像を強調。力強さと威厳を優先的に表現している」と分析する。
体の線に沿わない箱型のシルエットは、1980年代のレーガン時代に見られたウォール街の大物のような、懐古的なリーダーを再現しているようにもみえるという。
色はチャコールグレーやネービーといった保守的なトーンで統一し、信頼や安定感を漂わせる。「カジュアルさを重視する現代のビジネスリーダーたちとは対照的に、トランプ氏の独自性を際立たせている」(鴫原氏)
スーツ姿に、「MAGA(米国を再び偉大にする)」などの政治的メッセージが刺繍(ししゅう)されたキャップを被った姿も印象深い。鴫原氏は、「支持者が日常的に身に着けられる『着用型の表現』として、政治的な立場を示す役割も果たした」と話した。
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