共和党政策綱領に大衆迎合政策ちりばめる トランプ氏、バランスに苦慮も
産経ニュース / 2024年7月17日 18時29分
11月の米大統領選で返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領(78)は、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーでの全国大会で15日に採択された政策綱領に、不法移民への強硬な対策や、高齢者が懸念する年金制度改革への反対などポピュリズム(大衆迎合主義)的な政策をちりばめた。一方、若者や女性の関心が強い人工妊娠中絶の是非を巡っては、支持基盤である宗教右派から距離をとるなど、バランスにも苦慮している。
綱領でトランプ氏は、1期目で建設を推進したメキシコ国境の「壁」完成を訴える。ただ、約2000キロに及ぶ国境のうち、トランプ氏が1期目で壁を設置したり以前からあったフェンスを強化したりできたのは700キロ程度。実現に必要な財源などは不透明なままだ。
トランプ氏はまた、海外に展開する米軍部隊の一部を国内に戻し、国境警備にあて、乱用が深刻化する医療用麻薬フェンタニルの密輸阻止にも海軍を派遣すると主張。国内問題に軍の活用をためらわない姿勢を示すことで「強さ」を演出している格好だ。
綱領は高齢者へのアピールにも力を入れる。共和党は伝統的に、社会保障などで政府の役割を縮小する「小さな政府」を目指す立場をとるが、トランプ氏は年金制度の維持や高齢者向け公的医療保険制度(メディケア)の強化を主張。自身の支持者に中高年が多いことを踏まえた政策だ。
トランプ氏の最近の動きからは、過度に保守的とみなされないようにとの配慮も見え隠れする。
トランプ氏は全国大会開幕に先立ち、自身に近い保守派シンクタンク「ヘリテージ財団」がまとめた〝第2次トランプ政権〟への提言「プロジェクト2025」について、「私は何も知らない。(提言の)一部はばかげたもので、賛同しない。私は関係ない」と交流サイト(SNS)に投稿した。
同プロジェクトにはトランプ氏に近い元政権高官らが多数参加し、同氏自身も財団の活動を称賛する発言を繰り返していたが、一転して切り捨てた形だ。
提言には、経口中絶薬の承認を取り消して全国的に使用を禁じることやポルノの全面禁止など、宗教右派の主張が色濃く反映された内容が含まれる。トランプ氏は、こうした主張は従来の支持層からは歓迎されても、それ以外の層には逆効果だと判断したとみられる。
全国大会の会場では16日、配布用に用意されていた「プロジェクト2025」の冊子を片づける財団職員の姿があった。来場者の一人は「見せてほしいと言ったら『ダメだ』と断られた」と話していた。(ミルウォーキー 大内清)
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