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揺らぐ米国の対中ハイテク包囲網 ディープシークとファーウェイ 規制を逃れ先端機器入手

産経ニュース / 2025年2月8日 12時12分

中国が先端技術で先行するのを阻止しようと、米歴代政権が進めた対中包囲網が試練に立たされている。米政府は半導体などの重要部品について最先端品が中国に渡らないようにする輸出規制を実施してきた。だが、人工知能(AI)で中国新興企業「DeepSeek(ディープシーク)」が米国勢をしのぐ技術を公表したことなどで、規制の効果が疑問視されている。トランプ政権は戦略の立て直しを迫られそうだ。

輸出規制の「失敗」

「(ディープシークによる)躍進を許した輸出規制の危うい失敗に早急に対応するよう求める」

米上院のウォレン議員(民主党)とホーリー議員(共和党)は商務長官に宛てた3日付書簡で、「安価で高性能」として世界に衝撃を与えたディープシークの生成AIを巡って、こう警鐘を鳴らした。

米国は第1次トランプ政権(2017~21年)以降、米国の覇権に挑む中国への技術流出を防ぐ取り組みを進めてきた。その中核が商務省による輸出規制だ。

生成AIの開発は膨大なデータを取り込む「学習」と呼ばれるプロセスが土台になり、高性能の半導体が必要とされる。開発に欠かせないのが、米大手エヌビディアが高いシェアを持つ「GPU」と呼ばれる画像処理半導体。バイデン前米政権は22年10月にGPUを輸出規制の対象に入れ、以降もルールを厳格化してきた。

それでも、ディープシークは一定の性能を持つ半導体を調達したとみられている。ウォレン、ホーリー両議員の書簡は、規制発効前に中国側がエヌビディア製半導体の在庫を確保したり、東南アジアの闇業者を経て中国に流出したりした可能性があると指摘した。

規制をすり抜け、競争力を握る中国企業は他にもある。第1次トランプ政権が標的とした通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)だ。

米政権はファーウェイの通信機器から機密情報が流出する懸念があるとして、同社との取引を米国企業などに禁じた。数度の規制強化を実施したが、ファーウェイは最近も、高性能半導体を搭載したスマートフォンの新製品を発売。事業を拡大させている。

「狭い庭、高い塀」

浮かび上がるのは、技術進歩が加速する中、ハイテク部品に規制の網をかける難しさだ。

輸出規制は、中国企業を顧客に持つ米企業の販売を減らし、経営に悪影響を及ぼす側面がある。そのため、規制の効果を維持しつつ、自国企業への打撃を抑える制度設計が重要になる。

その軸となる方針について、第1次トランプ政権の政策を強化したバイデン政権は「狭い庭、高い塀」と呼ばれる手法をとった。規制対象を最先端技術に絞る(狭い庭)一方、取引自体は厳格に禁じる(高い塀)という規制の考え方だ。

これに対し、米国製の最先端品を購入できなくなった中国側は、自前で生産する「国産化」に力を入れた。政府補助金も支えとなり、半導体受託生産大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)などが技術力を高めた。

こうしたことから、米国の専門家の間で「狭い庭、高い塀」路線の見直しが不可欠だとの声が強まっている。米戦略国際問題研究所(CSIS)のルイス上席副社長は1月21日の討論会で、「狭い庭、高い塀」は「米国の技術優位が明白だった20世紀には悪くない政策だったが、経済のグローバル化が進んだ今も機能するかと聞かれれば、ノーだ」と指摘した。

トランプ政権高官は7日、同日の日米首脳会談に関する報道機関向け説明会で、バイデン政権が整備した輸出規制について「点検している」と明らかにした。現行の仕組みに「役立つ部分と、そうでない部分がある」と指摘し、一部を見直す可能性を示唆した。(ワシントン 塩原永久)

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