浮かび上がるトランプ次期政権外交 対中シフトで同盟負担増「米第一主義」鮮明に
産経ニュース / 2024年11月13日 9時59分
【ワシントン=渡辺浩生】トランプ次期米政権の主要閣僚らの選考本格化に伴い、トランプ2・0外交の骨格が浮かび上がる。米国の安全と利益の防護を最優先する「米国第一主義外交」を原則に据え、ロシアのウクライナ侵略の早期停戦と対中抑止力強化、同盟諸国への負担増要求-などを推進。これらをトランプ氏への忠誠を重視した人選が支えていく構図だ。
トランプ氏は9日、次期国防長官の候補と目されたポンペオ元国務長官、トランプ氏と最後まで予備選を争ったヘイリー元国連大使の起用を否定する声明を投稿し、波紋を広げた。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは社説で「ウクライナ、北大西洋条約機構(NATO)、太平洋の同盟を含めた世界における米国の強い指導力を信じる」両氏の排除は、トランプ外交の方向性を占うと指摘した。
トランプ氏は12日、大統領補佐官(国家安全保障問題担当)にウォルツ下院議員を指名すると発表。国務長官にルビオ上院議員を起用するとも報じられた。両氏ともトランプ氏お膝元のフロリダ州選出だ。
陸軍特殊部隊「グリーンベレー」出身初の連邦議員ウォルツ氏は「バイデン政権下で米国の抑止力は減退した」との批判を続けてきた。トランプ陣営に近いシンクタンク「米国第一政策研究所」が5月に公表した対外政策提言では、最重要目標に資源を有効活用する原則のもとで「中国の脅威の抑止に軍事力を集中すべきだ」と訴えた。
2016年大統領選でトランプ氏と共和党候補指名を争ったルビオ氏の外交観は、同盟関係を重視し敵対勢力に強硬姿勢をとる共和党伝統のタカ派路線と目されてきた。
ルビオ氏はしかし、ウクライナ支援を支持する姿勢を修正し、4月には同国向けに約600億ドル(約9兆2900億円)の支援を盛り込んだ緊急予算案の採決で反対した。最近も「膠着(こうちゃく)した戦争」への支援継続に否定的な発言をした。
ウォルツ氏らの起用は、出口の見えないウクライナ支援を停戦実現で早期に脱却し、生産基盤が限界にある兵器を中国の台湾侵攻抑止にシフトするという次期外交路線を明瞭に映し出す。親イスラエル、対イラン強硬派のステファニク下院議員の国連大使起用も、米国の利益と対立する国際協調には厳格な態度をとる方針の表れといえる。
1期目は経済通商政策の原則という色彩が濃かった米国第一主義は外交・安保の大黒柱となる可能性が高い。
一方、主要ポストの有力候補のひとりハガティ上院議員は10日、CBSのインタビューで、防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に倍増する日本を例に「同盟国は可能な限り(自らを)強化できるし、そうすべきだ」と主張。欧州やインド太平洋の同盟・友好国に安全保障上のコスト負担を一段と強く要求するのは必至とみられる。
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