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「米国のWHO脱退は中国の影響力増す」政府は翻意促すべき 吉川元偉元国連大使

産経ニュース / 2025年1月29日 16時22分

元国連大使の吉川元偉氏(佐藤徳昭撮影)

吉川元偉(もとひで)元国連大使が産経新聞のインタビューに応じ、トランプ米政権の世界保健機関(WHO)からの脱退は中国のWHOでの影響力を増大させるだけだとし、日本など有志国が翻意を促すべきだと強調した。詳細は以下の通り。

中国最大の株主に

――トランプ大統領は就任早々、WHO脱退に関する大統領令に署名した

「WHOのテドロス事務局長は大幅な活動費削減を迫られるとの悲壮な声明を出した。WHOへの最大の拠出国である米国の脱退で、中国が最大の拠出国となる。米国はコロナ発生時のWHOと中国との関係に不信感を抱き、脱退に踏み切ったとはいえ、皮肉にも中国が最大の〝株主〟となり、発言権が強まる。最大拠出国は人事や政策に直接、影響を及ぼすことができる」

「トランプ氏が政府開発援助(ODA)凍結令に署名したことも懸念される。世界最大のODA拠出国が援助を停止すれば、途上各国は困難な事態に陥る」

「日本では、トランプ氏が大統領に復帰する前から〝トランプ台風〟の進路を早く見つけ、手を打たねばと大騒ぎになった。彼の発言が『天の声』と受け止められているようだが、それが『変な声』なら、日本として黙って見過ごしてはならない。同じ考えを持つ同志国と協議し問題点を米国に伝えるべきだ。安倍晋三元首相時代の日本は第1次トランプ政権時、上手にメッセージを伝えることに成功した数少ない国だ。その経験を生かし日本政府はすでに行動しているものと思う。メディアを通じて考えを述べるのは賢明ではない。政権中枢の人物に冷静に伝えるのが賢いやり方だ」

中露の機先制したいトランプ氏

――トランプ氏の安全保障観をどう見る

「トランプ氏は就任演説で『(バイデン前)政権は外国の国境を守るため際限なく資金を投じた』と述べた。演説では、同盟は大事であるとか、同じ価値観を持つ国々と安全保障を共有しよう、という考えが示されなかった。北大西洋条約機構(NATO)諸国も日本も集団的自衛権にもとづく米国の『抑止』を確認したいところだが、トランプ氏は同盟国の面倒を米国が見過ぎてきた、自力で防衛力を強化せよ、との考えが明白になっている」

――トランプ氏はパナマ運河の管理権の返還に言及するとともに、デンマーク自治領グリーンランドの所有、管理の必要性にも最近、触れている。

「トランプ氏の就任演説の問題点の一つは偽情報が多いことだ。パナマ運河返還の議論の中で『運河建設で米国は3万8千人もの人命を失った』と述べたが、全く根拠がない。歴史家マシュー・パーカーは、運河工事で死亡したのはフランス人、カリブ諸国からの労働者ら推定約2万5千人で、米国人は300人程度と述べている。大統領演説を聞いた多くの人は演説内容が本当だと信じるだろう。その結果、これから米政府が行うことが過去の米・パナマ間の条約に反していても、誰も異論を唱えないかもしれない」

「パナマ運河とグリーンランドの両方に中国の影が見える。パナマ運河の最大利用国は米国、中国、日本の順であり、米国の動きは日本としても注視に値する。北極への足掛かりを築きたい中国としては、グリーンランドの独立や、島のどこかに調査船の寄港地を置くことも視野に入れているのではないか。地球温暖化により、資源開発や北極海航路の観点からグリーンランドの価値は上がっている。そこを喉から手が出るほど欲しがっているのが中国とロシアだ。だからこそトランプ氏としては機先を制したいのだと思う。同盟国である米国とデンマークとの間で冷静な対話が行われることを期待する」

(聞き手 黒沢潤)

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