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トランプ氏が痛烈批判 バイデン氏の「弱腰」外交に根強い懸念 中朝露などの増長招いた

産経ニュース / 2024年7月14日 12時0分

11月の米大統領選に向けた6月27日の候補者討論会で、外交・安全保障政策の議論が占めた比率は大きくなかった。その中で耳目を集めたのは、共和党のトランプ前大統領が中朝露の3首脳を名指しし、「彼らはバイデン氏を尊敬も恐れもしていない」とバイデン大統領(民主党)を糾弾したことだ。バイデン氏の弱腰が米国の敵対勢力を増長させているとの趣旨である。この見方は党派を問わず外交・安保専門家の間で根強く、今後の選挙戦に与える影響が注視される。

「バイデン氏の軍事政策は狂っている。彼のもとで戦争は終わらず、彼はわれわれを第三次世界大戦に追い込むだろう」

トランプ氏は討論会でこう述べた後に続けた。「中国の習(近平)国家主席、金正恩(朝鮮労働党総書記)、プーチン(露大統領)、彼らはバイデン氏を尊敬も恐れもしていない」

プーチン氏については、「もし本物の大統領、プーチンに尊敬される(米)大統領がいたなら、プーチンは決してウクライナに侵攻しなかっただろう」ともトランプ氏は述べた。

つまり、バイデン政権は侮られており、米国の抑止力低下が敵対勢力の軍事行動や挑発行動を誘発しているという主張だ。

トランプ氏の「予測不可能性」は抑止力

この点で、トランプ氏の「強み」としてしばしば指摘されるのが彼の「予測不可能性」だ。

トランプ氏陣営のシンクタンク「米国第一政策研究所(AFPI)」は5月に出版した安保政策の提言書で、トランプ氏の予測不可能性が「米国の敵対国による行動を妨げる重要な役割を果たした」と述べている。

ここで予測不可能性の代表例とされているのは、化学兵器を使用したとみられるシリアへの空爆(17年4月)や、アフガニスタンでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が使用していたとみられるトンネル施設への攻撃(同)だ。

提言書によると、これらを受けてプーチン氏は、仮にロシアが好戦的な行動をとった場合にトランプ氏がどう反応するか「確信が持てなかった」。トランプ氏は米国の権益を守るためならあらゆる手段を使う「強力で断固とした大統領だ」と思わせ、プーチン氏が周辺国に侵攻するのを思いとどまらせたと説明した。

提言書は他方、バイデン政権の21年8月に行われた米軍のアフガニスタン撤収について、「米国の信用と世界の安全保障に甚大な損害を与えた外交政策の大失敗」と酷評する。バイデン政権の安保政策やバイデン氏の米軍最高司令官としての指導力が「脆弱」だったため、プーチン氏にウクライナ侵略を許すことになったとしている。

有力シンクタンクも「北の挑発3倍増」指摘

バイデン政権の安全保障政策の弱さを指摘する見方は、党派を問わず専門家の間で根強い。

米国の代表的シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」は今年1月の報告書で、21年のバイデン政権発足以降、北朝鮮によるミサイル発射などの挑発行為は増加傾向にあり、金正恩氏はバイデン政権からの会談要請を「全て拒否」してきたと指摘した。

報告書によると、北朝鮮によるミサイル発射などの挑発行為はバイデン大統領在任中に123件、トランプ前政権期には41件で、今年1月時点でトランプ前政権期と比べ3倍に増加した。報告書は「11月(の大統領選)にトランプ氏が勝利すれば、北朝鮮の挑発を減らす」可能性があると予測した。

6月27日の候補者討論会では、バイデン氏の高齢不安が一気に強まった。

米国際政治学者のウォルター・ラッセル・ミード氏は7月1日の米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)で「討論会でバイデン氏が見せた弱々しさは、バイデン政権の耐久力と指導力への信頼を損なっている」と指摘。「諸外国の指導者が米大統領を弱い存在と受け止め、米国のパワーに挑戦してくる」ということが「最悪のシナリオ」だと警鐘を鳴らした。

先例としてミード氏が挙げるのが、ブッシュ(子)政権が金融危機の対応に追われていた08年、ロシアが隣国のジョージア(グルジア)に侵攻したことだ。中朝露の首脳やイランの最高指導者ハメネイ師は「米国が混乱しているこの機をとらえて、年内に劇的な行動に出る可能性がある」とミード氏は述べている。

トランプ氏は同盟・友邦諸国に不安も

候補者討論会でのトランプ氏の批判に対し、バイデン氏は「同盟もまたわれわれの力だ」と切り返した。自身のもとで同盟・友邦諸国との関係が強化されているとし、「ウクライナ支援には日本や韓国を含む世界の50カ国以上が加わっている」と強調した。

実際、「米国第一」を信条とするトランプ氏は同盟諸国に防衛費負担の増額を求めており、このことが彼の予測不可能性と相まって同盟・友邦諸国に不安を与えている。

米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は6月28日の記事で北大西洋条約機構(NATO)元幹部の懸念を伝えた。元幹部は「最悪なのはトランプ氏の予測不可能性だ」と発言。トランプ氏が突然、ウクライナ侵略を巡って和平を切り出したり、米国が安保関係の約束を空洞化させたりすると厄介だと述べた。

トランプ氏から在韓米軍の駐留経費負担増を求められている韓国の有識者は「第2次トランプ政権に備えなくてはならない」と同紙に語った。

同紙は、トランプ氏の予測不可能性に関するインド国家安全保障会議の元高官の懸念も取り上げた。

この元高官は、中国政府が米側に貿易関係で良い条件を提示した場合、トランプ氏は対中強硬姿勢を転換させる可能性もあるとみる。そうなれば、国境問題で対立する中国との関係を巡り、インド側の計算は複雑になると元高官は語る。

バイデン、トランプ両氏の外交・安保政策の長所と短所が、ここにきて明確な輪郭を帯びてきたといえそうだ。(岡田美月)

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